金曜ロードショーの録画をちびちび観た。 ひとのデートを延々見させられる退屈な前半で気が狂いそうになった。ところが後半四十分、ことに最後のあれに至っては。 なるほど、評価が高いわけだ。別の意味で狂いそうになった。 臨死体験の完璧な映像化があるとするなら、これがまさにそれだ。 二人共かつて熱く語ったそれぞれの夢を叶えたのだ。なのにいまふたりは地獄を見ている。それが至福の幻像であるからこそ、ふたりの感じる地獄は深い。 これがララランドに生きるということ。アメリカ合州国に、夢を持って生きるということ。この酷薄に耐えて、生きていくということ。 崩折れそうな喪失感と絶望に耐えながらしかしジャズマンは口の端を吊り上げ彼女を真っ直ぐに見つめる。女優もまた精一杯の笑顔を無理矢理にこしらえ彼に微笑む。 一緒にはならなかった。それでも、ふたりの愛は本物だったのだ。