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1月, 2013の投稿を表示しています

第13話 東京都新宿区 神宮球場のウィンナー・カレー

高校野球など全く興味のない俺だ。しかし太の母親、つまり俺の姉貴が2年前離婚したこともあって、俺はもう4年も会っていない甥っ子のことがどこか心に引っかかっていたのかもしれない。 炎天下に放たれるやや暗い影を帯びた独白。 「あんたいい体してるねえ」 「え!」 「なんかやってたの」 「いや。そんな……」 次のコマが情景描写の捨て駒と見えて、実はしっかりゴローさんの肉体美が女子の視線を総ざらいに奪っていることがわかる。これが注意しなければ読み飛ばすくらいのさりげなさで描かれているところがうまい。谷口先生が通に好まれる所以である。 前回の立ち回りと併せ、ゴローさんの謎にまたひとつ肉薄するエピソードである。

第12話 東京都板橋区 大山町のハンバーグ・ランチ

「あなたは客の気持ちを全然まるでわかっていない!  モノを食べる時はね。誰にも邪魔されず、自由で、なんというか、救われてなきゃあダメなんだ。  独りで静かで豊かで……」 本作のクライマックス。たぶん初めてひと前でゴローさんがその食事哲学を披露する。 それはつづめて言うなら、こう言えるのだろう。 孤独の、グルメ。 瓦割りの写真。強さをひけらかさずにはいられない店主の幼稚な承認欲求、粗暴な性質を伝えると同時に、その強さを誇る男を一瞬に組み伏せたゴローさんの更なる強さを際立たせる小道具にもなっている。 ここにまたゴローさんの秘められた過去が僅かに露見する。そういう体術をなにゆえか、過去に身につけた男。 ……あいつ……あの目。 ゴローさんがウーさんの瞳に見たものは、いったい何だったのであろうか。

「行人」 夏目漱石、1913年。

「僕は勉強ばかりしてきたので普通のひとたちとはうまく付き合えません。そういうことを周囲のみなさんは理解し、僕にやさしく接してくれなければいけないのです」。成人男子が口にしていいセリフだとは思えないのだが、当時のインテリたちには好意を持って迎えられたのかもしれない。「よくぞ言ってくれました」「僕達の気持ちを代弁してくれるのはやはり漱石先生だけだ!」と。 坊っちゃんとかいう作品を書いたのもむべなるかなである。 嫂(あによめ)をはじめとする女性たちは大衆を象徴し、「兄」は明治の知識人を代表しているのだろうか。 なんだ? 明治の知識人って。維新に、国に、官学に、国費留学に甘やかされたボンボンどものことか? 自己戯画化であるならまだしも、これが漱石の本音なら「甘ったれるな」としか言いようがない。 女がほしい、結婚したいという欲望を強く持ちながらその周旋、斡旋を友人任せにしうまくはかどらないと友人に不満をおぼえる主人公。そして「結婚すると女は変わるぞ」と吐き捨てる兄。これは同一人物を分裂させたキャラクター造形であり、統合すれば時任謙作になる。伴侶探しを他人任せやら安直な方法(行きずりの女一目惚れ)やらで済まし、結婚後にここが悪いあれが駄目だとぶーぶー文句垂れやがる最低最悪の男。 暗夜行路はたぶん行人のオマージュ、粗悪なモチーフの発展継承作品なのだろう。旅先で少々疲れたくらいで生悟りするふざけた野狐禅も共通している。 「所有という語の奇妙な使用法」のくだりにはシュティルナーの影響がもしかしたらあるのかもしれないが、西洋の新思潮をちょっとつまんで、取り入れてみました程度の、知的粉飾以上のものは感じられない。 「俺が欲しいのは女ではない。母だ!」。兄の、主人公の、そして漱石の叫びは畢竟そんなところに落ち着くのではないだろうか。それが由悠季レムダイクンにまで至る日本男子の普遍的感情であるのだとしたら、この小説はそういう病理を剔抉したという点においてやはり名作という事になるであろうか。 主人公は有楽町の設計事務所に勤める身だろうに、なんで期限も定めずふらふら長期旅行してられるのか。 以上、作品について文句ばかり言いましたが、面白いなあと思ったところもありました。 行人の感想、その2。  http://shoujinonaiie.blogspot.jp/20
年に一度の楽しみ、秘宝ベスト&トホホ購入。 俺がいいと思った映画(RE:Cyborg、エヴァQ)、トホホ組だわ。やっぱ俺見る目ねんだなあ。 しっかし仕事とはいえ、ライター陣仰山映画観てはる。 アイオー2店とも見当たらないなあ。 電子工作特集だと需要高くなるのか? それとも、ダブルメディア作戦が功を奏したのか。減ページ、大幅値上げにも関わらず。

第12話 目黒区中目黒 ソーキそばとアグー豚の天然塩焼き

http://www.tv-tokyo.co.jp/kodokunogurume/story/ 最終回。堂々のフィーチャリング原作者。 ラフティー丼。 脚本、田口佳宏。 演出補、井川尊史。 監督、宝来忠昭。 青山奈々、南沢奈央。

第11話 文京区根津 飲み屋さんの特辛カレー

http://www.tv-tokyo.co.jp/kodokunogurume/story/chapter11.html かりんとう饅頭。 あー。やってしまった。いかんなあ。 さ。残りを食べなきゃ。 原作の武闘シーンがこういう形で。 深夜の低予算番組だからといって手を抜いた感じのない、堂々たる貫禄。美保純の映画演技。降旗康男監督映画の一シーンを観ているよう。 脚本、田口佳宏。 演出補、宝来忠昭。 監督、溝口憲司。

第10話 豊島区 東長崎の生姜焼き目玉丼

http://www.tv-tokyo.co.jp/kodokunogurume/story/chapter10.html ゴローさん、レッツノートでプレゼン。 生姜焼き、目玉焼き、ごはん。全部俺の大好物だ。 でも、こういうふうに食べるのは、初めてだ。 うまい! 脚本、田口佳宏。 演出補、井川尊史。 監督、溝口憲司。

みうらじゅんのサントラくん「思春期映画対決」

http://www.nhk.or.jp/r1-night/mjs/ 14日月曜日の放送、もう抱腹絶倒。筋少の映画音楽カバー、とりわけ時かけカバーがバカバカしすぎて笑い死にした。これをアルバムでカバーしようという発想は普通持たない音源。 オーケン あのねえ。まぶっちゃけこのころぼくどうかしてたんです。 … これねえ。いまもねえ。ライブでねえやるんですよ。そうするとあの、知世ちゃんの部分をお客さんがみんな言ってくれんの。「ヒトデと!?」とか言って(笑)「あ! あの歌ね?」とか(スタジオ内爆笑)みんな言ってくれるので、いやコールアンドレスポンスができるっていう。 オーケン あの、メジャーでデビューしてから、申請さえすれば、大概の映画音楽はカバーできるんだってこと知ったんで、「じゃあ、自分の好きなヤツどんどんカバーしちゃえ」って…… みうら そんなねえ、ロックいないですよ。 オーケン いないですよ(笑) みうら サントラは意外と権利が薄いっつって「じゃあ」はないでしょ。 壇蜜のエロエロっぷりにむしろ感心。クレバーなエロ、を感じる。 4月からは月一レギュラー番組に昇格とのこと。うれしい……けど、続くのか!?

第4話 千葉県 浦安市の静岡おでん

http://www.tv-tokyo.co.jp/kodokunogurume/story/chapter4.html これも浦安じゃねえの? パリじゃないでしょ? と思ったけど、しかし、「いや、パリだ。パリって言っただろ? だからパリだ! お前はただそれを黙って受け入れればいいんだ!」という演出、嫌いではない。いや、むしろ好きだ。「血を吸う宇宙」方式。 失敗したら後悔すればいい。おれはいま、腹が減りすぎているんだ。  さゆき。 空腹を忘れるほど後悔する日が、いつか訪れるのかもしれない。 でも、それは今日ではない。 脚本、田口佳宏。 演出補、井川尊史。 監督、宝来忠昭。

第10話 東京都杉並区 西荻窪のおまかせ定食

こういう店ってのは……もともとヒッピーのような団塊の世代がやってんだよなァ。 これはこれで「久住節」なんだよなあ。もともと「夜行」自体が『夜行』の生硬な、徒に難解晦渋を気取った青臭い「漫画主義」への揶揄だったわけだし。そういう作品から出発した久住氏がこういうエピソードをひとつは描くことになるのは必然だったのかもしれない。扶桑社だし。 先行する時代を全否定するかの如き、中期ガロの反進歩、反左翼、反「反体制」、面白原理主義。その時代をしょった作家の、これはこれで意地というかレゾンデートルというか。 典型的な「そういう」店だなあ。  どうも苦手だな。やっぱり。なぜか、そういう気持ちが若い頃よりも強くなってる。  なんか店員が客を見下ろしているような……みんなもっと勉強してと言っているよう な…… 渡辺和博(彼について思うのはその差別感覚に対する義憤以前に、「なんでそんなに若者風俗、服飾ブランドに詳しいの?」という疑問。女性誌とか丹念に読んでたのだろうか? 余談。)が人間をマルビに分類するその手つきと同じ、そういう偏見と差別感覚が「いいんですか!?」と心配になるほどに全開。しかし、それはみんなが感じていたことなのだ。民衆を睥睨する進歩主義の傲慢に人々が反発するのは当然の帰結である。 もちろん、物語は良質の物語らしく、進歩主義への絡み酒展開に終始することなく意外な展開を見せてくれる。

第3話 豊島区 池袋の汁なし坦々麺

http://www.tv-tokyo.co.jp/kodokunogurume/story/chapter3.html 「ナニシマスカ」 「あ汁なし坦々麺ください」 「…………辛イヨ」 ティッシュ配りのグッジョブさん(松江勇武)も中国人店員(飯田隆裕)も、素晴らしい存在感。どっちもイイ感じ。 楊のお母さん、なんか美人。 脚本、田口佳宏。 演出補、井川尊史。 監督、宝来忠昭。

第2話 豊島区 駒込の煮魚定食

http://www.tv-tokyo.co.jp/kodokunogurume/story/chapter2.html そうかあ。空腹のあまり中座する、というのは、松重五郎にあえて付加された仕様なんだな。強調表現として。 最初のシチューもうまかったけど、この流れに必要だっただろうか。 いや。これが駒込流なんだろう。 脚本、田口佳宏。 演出補、宝来忠昭。 監督、溝口憲司。 久住「立ち飲み屋さんありますねえ。 駅前にねえ、あの昔ながらの立ち飲み屋があるとこってだいたい、楽しい街なんですよ。」 孤独のロケハン<原作に出てくるお店は番組では取り上げない> http://www.tv-tokyo.co.jp/kodokunogurume/diary/index.html

第1話 江東区 門前仲町の焼き鳥と焼き飯

http://www.tv-tokyo.co.jp/kodokunogurume/story/chapter1.html 今度はタレで白いメシ食いてえな。 第一回ということもあって、探り探り役作りしている感じ。まだあの「松重版井の頭五郎」が確立されていない。 焼き鳥屋さん、役者さんと本物の店の人、クリソツ。 脚本、田口佳宏。 演出補、宝来忠昭。 監督、溝口憲司。 久住「僕テレビでやるにあたって、井之頭五郎っていうのはお酒が飲めないんで、飲み屋でやるっていうのはすごい抵抗があったんですよね。だけど、食べものすごい美味しくて、こういうのもありかなっていうふうに思いました。すごくいい店で、僕は好きですね」

第8話 神奈川県川崎市 八丁畷の一人焼肉

http://www.tv-tokyo.co.jp/kodokunogurume/story/chapter8.html あわてて載せすぎたなあ。 あせるんじゃない。肉を無駄に焦がしちまう。 にんにくを投入して変化をつけ、心を落ち着かせ、自分のペースを取り戻すんだ。 脚本家、久住節を完全に理解している。「食のドラマ」をわかっている。 観てたら自分もどこかで一人焼肉したくなってきた。 久住「一人焼肉できるかできないかっていうのはねえ、大人かどうかという感じがしますね。へへへ(笑)」 脚本、田口佳宏。 演出補、宝来忠昭。 撮影、浅野典之。     監督、溝口憲司。

第7話 武蔵野市吉祥寺 喫茶店のナポリタン

http://www.tv-tokyo.co.jp/kodokunogurume/story/chapter7.html どうやら、メニューの森に、迷いこんでしまったようだ。  まてよ。よく考えると、何を俺はこんなに迷っているのだ。 迷ったときは、両方頼めばいいじゃないか。 「ぴ、ぽ、ぱ」。フォーマット。 迷ったときは、一番上のものだ。 カヤシマスーパーライブ。落語。フォーク。 怪しい爺さん、南波得賢。いい感じ。 脚本、田口佳宏。 演出補、井川尊史。 監督、宝来忠昭。 久住「アルデンテとかそういう世界じゃないです。ケチャップの美味しさ。このタバスコの辛味とチーズが入って」

第6話 中野区 鷺宮のロースにんにく焼き

セカンドシーズンから見始めたからこの年明け再放送はほんとにうれしいお年玉になった。テレ東、ありがとう。 http://www.tv-tokyo.co.jp/kodokunogurume/story/chapter6.html おかずがいいとごはんもうまい。  辛い。いや甘い。甘辛だ。 いいぞいいぞ、にんいくいいぞ。 白いご飯に合いすぎる。 さぎのみや、満足。 音楽のミキシングが左右にきっちり振ってあって俺好みなのであります。せっかくステレオなんだから目一杯のステレオ幅で楽しむ。ゴロさんの貧乏性に通じるものがある。 吉野役の田中要次さん。役者さんの世界にまったく疎いのであれだが、もうしょっぱなから「ひどい演技だなあ」と思ってしまった。バーの男役のときも、おカマちゃんのときも、両方。 目利きの人から「お前この演技の良さがわからないのか!」と叱責されたら、一言もないけど。 追記:なんか見覚えはあったんだ。やっぱあのひとだ。NHKのトーク番組に、不貞腐れたような、偉そうな態度で出てた。いい年して突っ張ってるというか。 アナウンサーが名セリフが出るよう水向けてやったら、それを明らかにわかってるくせに「え? なに?」とわざとすっとぼけて番組の流れをぶち壊しにしていた。 トーク番組がそんなにいやなら最初から出なきゃいいだけの話じゃないか。嫌々出てやってるんだという態度になにか大物まがいのかっこ良さを見いだしているのか。 下積みが長すぎて回復不能にねじくれてしまった役者の悲劇を見る思いがした。 艱難汝を必ずしも玉にせず。師の言を思い出した。 脚本、板坂尚。 演出補、宝来忠昭。 監督、溝口憲司。 http://shop.tv-tokyo.co.jp/top/detail/asp/detail.asp?gcode=DBS000096

第9話 神奈川県藤沢市 江ノ島の江ノ島丼

俺はカメラの露出に夢中だったけど、もしかしたらあの頃既に彼女の心は俺から離れつつあったのかもしれない。 長続きしなかったな……いまはナカムラのカミサンで二児の母か。 言葉少なの独白からまたゴロさんの過去が僅かに露見する。 しまった……そうか。じゃあさざえのつぼ焼きでさざえがダブってしまった。 たまに「ダブる」。そしてそれを気にする。気に病む。一食を完璧なドラマにしたがるゴロさんの完全主義嗜好が垣間見える。 それは対人関係にも反映し、ときに難を生じてきたのかもしれない。