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1月, 2023の投稿を表示しています
 

「コラテラル」Collateral, 2004.

 午後ロー180806の録画をいま頃観た。 評判の悪い映画だったので逆に面白く観れた。なかなかよかったじゃん。「広大な宇宙の出来事に比べたら人間の命なんて」云々かんぬん。まあニヒリズムというか冷笑。いかにも殺し屋の思想。で、運転手マックスは切り返す。もううんざりだしキレたのだ。「おうわかった。安いもんだよな人間なんて。お前さんの言う通りだ」。この映画の白眉。 で、評判悪い原因はまあ脚本(原作小説はあるのかいま俺は知らないで書いてる)の細部の詰めの甘さだろうね。ターゲット五人だよ? 残りふたりだよ? パソコンの中にデータはあったのにー! もうわかんなくなっちゃったよーお前責任取れよーて。プロの殺し屋だろ? 覚えとけよ五人くらい! マックスも逃げるチャンスはずいぶんあったよねえ。なのにずーっといいように使われるんでまあ観ててつらいよね。なかなかフラストレーションが溜まる展開。そこらへんでやっぱみんな点が辛(から)くなっちゃったんじゃないでしょうか。 追記:  ウィキペ によるとスチュアートビーティーのオリジナル脚本を映画化にあたって大幅改稿とのこと。また俺が接した風聞と違い評価は概ね高いよう。 動物(コヨーテ)は偶然に映り込んだらしい。しかしこれがこの映画の重要シーンになっている。ここでふたりともそれを見ながら何も言わない(この演出がよい。「なにしてる、こっちは急いでるんだ。轢き殺しちまえ!」とか言わせたら映画台無し)が、しかし少なくともヴィンセントは「たかが動物に対して当たり前のように徐行したマックス」に対して巨大な衝撃と引け目を感じている。圧倒的優位に立っていたはずの殺し屋の足元がたったこれだけのことで揺らぐ。この後の展開の見事な伏線となっている。
 
 

「NOPE/ノープ」(その2)

 [三周目&世の評論、解説を自分に解禁] ブラックホールの解説を見て自分が15%くらいしか映画を理解してなかったことが判明した。つか、初めて映画をまともなレベルに理解できた。 お猿さんエピソード、完全にパラレルにつながってるじゃん。無関係じゃんと思ってた自分の不明を恥じた。 解説及び特典映像で得た知見も合わせて自分なりに時系列を整理するとこうなる。 1. 白昼。登山者に興奮するラッキーをなだめるOJ。ラッキーのテリトリーを侵犯しているのだ(未使用映像 HIKER。作品のキモを暗示している)。同日? デュープ、空飛ぶ円盤を夕空に目撃。 2. 牧場の朝は早い。黙々と働くOJ。ラジオから流れる「アグアドゥルセ郊外山岳遭難、二日前から消息を断つ」のアナウンス。 登山者が侵犯したテリトリーはラッキーのそれだけではなかったのだ。 3. その日? の昼、OJの父、高速で飛来した硬貨に右目と脳をやられる。死亡。 4. 半年が経過。OJ、撮影スタジオのスタント調教を失職。 5. OJその足で遊園地にラッキーを売りに行く(既に10頭売っている)。「金曜夕方五時半、パークの新作ショー、『星との遭遇体験』の初日よ」と園内にアナウンスが流れている。事務所では奥さんが電話でメディアに内覧会を通知している。 6. その夜。ゴーストに落ち着きがない。デュープパークで何事か行われ(これがおそらく内覧会だろう)、その上空にあったものがこっちに飛来してきた。UFOだ! 7. これで一攫千金だ。牧場を売らなくて済む! 妹エムとふたりヨドバシに監視カメラを買いに行く。 8. ヨドバシのあんちゃんエンジェル、据え付けに来る。据え付け角度の指示から「怪しい」と気づく。空の何かを撮ろうとしているんだ。  彼が女に振られた翌日であることも重要。エム含め全員、人生に行き詰まり救いを求めている状態なのだ(柳下さん指摘するところの、空に浮かぶなにかを待望する心理状況)。 エム、デュープパークから勝手に馬の立像を盗んで来る(盗むか普通? 手癖が悪すぎる)。デュープも登場、新作イヴェントに兄妹を招待。 9. その夜、UFO登場。白馬ゴーストは危険を察知して逃走、UFOはスターチュウを吸い上げる。ヨドバシ無許可遠隔視認。しかし肝心のカメラは円盤のEMP作用で動作してくれない。 10. エム、現場で会った巨匠ホルストに撮影

「NOPE/ノープ」Nope, 2022.(その1)

 [一周目] お猿さんのエピソードと空中物体、全然独立、別個の話にしか見えなかったんだけど俺なんか見落としてる? 映画を理解してない? 多弁妹が俺ほんと苦手でまあ導入部から結構つらかった。兄の気持ちそのままですよ。商談の最中に喋るな! 自己宣伝するな! 完全に授業妨害児、発達障害、ADHDじゃないですか彼女。 イェリング(金切り声)がまた。天敵ですよ天敵。身内にも身近にも居て欲しくない。 ヘイウッド牧場の彼らが白人だったらこれ完全にヒルビリー映画。カッペの復讐譚(おら達をバカにしたすべての者に対する)なんだよね。トランピズムを支えた心性そのもの。カネもないのに取らぬ狸の成功当てにしてカメラ一式買っちゃうああいう消費の仕方が「いかにも」。あんま感情移入できなかった。 正体が動物、っていうのは面白かった。 [二周目] ひとつひとつのセリフ、行動の意味がわかるようになった。二周目だから。ストーリーの中でどういう意味を持つのか、何を指しているのか、わかるようになった。 あの直立吹き流しとかね。あれの道沿い多数配置がつまり一種のレーダーになるわけだ。あれの通電が落ちて萎(しぼ)めばその上空に奴がいる。 でも依然わからないことがたくさんある。 音楽は流す必要あったんすか。景気づけ? ジュピター遊園地の夕方ショーはあれが初演なのか。それとも何回目かなのか。そしてショーはジーンジャケットの出現を組み込んだものだったのか。そんなことしていままでどうして無傷だったのか。それとも怪物体とは無縁のちゃちなユーフォーショーが予定していたものだったのか。 旗には懲りたはずなのにラストそれを引きずったジュピター坊やにどうして食いついたのか。 あの第二変態(びらびら)にはなんか意味あるんすか。どうしてああなった? あの直立した靴はなに? あそこは怪異の空間だったの? そのせいで猿は狂ったの? 依然この「猿芝居」とヘイウッド牧場の怪異の関係がわからない。 ジュピター氏と顔を食われた彼女が今回また難に遭い命まで奪われたのはなぜ? 教訓的理由は少なくともなさそうである。 ジーンジャケットはいつからここに棲み着いたのか。これは都合一ヶ月くらいの出来事なのか。 撮影の鬼、自ら加わり自ら頂上を目指したとはいえ、ヘイウッド妹の誘いがそもそもなければこういうことにならなかったのでなんか気の毒。彼(詩を詠むよう