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 「桐島、部活やめるってよ」。BSプレミアムの録画160329をいま頃観た。 森田公一の「青春時代」、の映画化と言える。ヒリヒリとする、二度と戻りたくない時代。 早川義夫の「かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう」の映画化でもある。 もちろん映画部の前田くんたちを全力応援で観た。前田くん、君たちだけが正しい。 「戦おう。ここが俺達の世界だ。俺たちはこの世界で生きていかなければならないのだ」 映画という虚構に逃げを打った彼らが、それでもこれを言わなければならない。スクールカーストの勝者たちに嗤われ怒鳴られ踏みにじられながら、それでも彼らは散らばった機材を拾い再び撮影に戻る。ああ、夕日が沈んで行く。マジックタイムが終わる。 現実と闘わなければ、この光をフィルムに定着させることすらできないのだ。 だから最も能く闘った者は前田であり、その威厳の前に菊池は跪拝せざるを得ない。ひとの8ミリを無造作に奪い取り「どうですか? 将来は映画監督ですか? 女優と結婚ですか?」とニヤニヤ小馬鹿にする菊池は、ファインダーの中の「格下」が真の勇者、勝者、主人公であることに気づく。気付かされる。「いいよ。俺は」。からっぽの惨めな自分に気づき涙があふれる。やっぱかっこいいね、などと言われれば、よけいに。 桐島の存在にまったく無関心な人物が三人いる。前田。吹部の部長。野球部キャプテン。いちばん尊いのは全力の努力。努力を傾けるに値する何物かを見つけることができた者。照明の下練習を続ける野球部を菊池が見下ろすところで映画は終わる。
 
 

「漁港の肉子ちゃん」2021.

230103、教育テレビでやったやつの録画をいま頃観た。 いやこれ大傑作だ。 背景美術の狂的なクオリティーに目を奪われていたら作品の凄さはそれにとどまらない。 境界知能。トゥレット障害。本人たちにも理由がわからない、クラスで自生する集団力学。売買春。月経。見えているのに見えないふりをしてきたものが次々に可視化されていく。 一人称の独白。これは純文学の文体、そのアニメ化だ。動画の中で文学が文学としてしっかり息づいている。その試みが見事に成功した初の例ではないか。もちろん西加奈子の原作がまず素晴らしいものであるのだろうが。 動物の声が聞こえるのはどういう意味を持つのだろうと思っていたらなんとそれはきくりん自身のつぶやきだった。乖離、の語が正しいかわからないが、流浪と貧困、過酷な現実から心を守るために編み出した彼女なりの防衛反応なのだろう。 美しい肢体を持つ絶世の美少女きくりんに対し二宮がまた素晴らしい美少年。そして思春期の二人が惹かれ合っているのはそれ以上の理由からである。ふたりとも周囲の普通から規格が外れている。そのことを互いに語り合える、わかりあえることの喜び。 抱えていた思いを全部吐き出したとききくりんは自分の醜さに気づき涙をこぼす。そのきくりんの姿は醜くない。醜さを自覚できる魂は醜くない。 監督は渡辺歩氏。フィルモグラフィーを見るに目を引くものは過去作にないがそれは俺がどらえもんを全く観てないからだろう。 アマプラ リンク
 マンダロリアン第一シーズン全8話を配信で観た。 最終話は殊に気合いが入ってたね。まさかのワイルドバンチ、地下水道。絶対見せないかと思ってたら案外簡単に顔見せたのも逆によかった。 「冗談だ。緊張をほぐすためにわざと言った」。あれほど毛嫌いしていたドロイドの覚悟に声を震わせるマンドー。侠気(おとこぎ)を見せるロボガンマン。 モフギデオン(ターキンの係累? 時系列的にいつ?)。ワルはワルでも格上のワル、余裕あるその凄みを役者さんが能(よ)く好演してた。やはり古武術の遣い手であったかと。 女剣士、絶対オーディションは「志穂美悦子似で」選んだとみた。子連れ狼含めあそこらへんのチャンバラが大好きなのだ。ファブローも、他のひとも。第四話は七人の侍だし。 第五話には北国の帝王を感じたね。「小僧、結局やさしさがなければ駄目なんだ!」と。 宣材スチルでしか見たことないあの「オオトカゲに乗った帝国軍兵士」の再現がガチファンムービーの情熱丸出しでよかったね。これをマンドーにやらすための第二話のさかなクン乗馬訓練だったわけね。 「有無は言わせん」おじさんかわいそうだったね。気が進まないのにマンドーに圧しきられて参加させられて。コムリンクで要らん指示しちゃったせいで傍受されてああいう羽目になっちゃったし(あれがなければおじさんは無事に船に辿り着けてた)。 スピーダーの二人組がグダグダなどーでもいい会話するとこはなんかすごくよかった。頭の悪い下級兵士感があってよかった。
 シーハルク第一シーズン全九話を配信で観た。 第九話冒頭の出来があまりに良いので、このフォーマットでまるまる一話くらい作って欲しいところ。旧TVシリーズの劇伴をそのまま使用して。 もちろん本作の新しさも悪くはない。正体ははじめっから割れてるというトニースターク(ロバートダウニー)が切り拓いたMCUの伝統。だからジェニファーウォルターズは放浪の旅に出る必要も低賃金労働に就く必要もない。 だがブルースバナーを見舞ったそれとは違えども彼女もまた試練と戦うヒーローもといヒロインだ。判然としないもやもやした敵だが終盤それは彼女を妬み憎むインセルボーイズの集会として明確な姿を現す。 毎回を締める水彩画がとてもよい。