230103、教育テレビでやったやつの録画をいま頃観た。
いやこれ大傑作だ。
背景美術の狂的なクオリティーに目を奪われていたら作品の凄さはそれにとどまらない。
境界知能。トゥレット障害。本人たちにも理由がわからない、クラスで自生する集団力学。売買春。月経。見えているのに見えないふりをしてきたものが次々に可視化されていく。
一人称の独白。これは純文学の文体、そのアニメ化だ。動画の中で文学が文学としてしっかり息づいている。その試みが見事に成功した初の例ではないか。もちろん西加奈子の原作がまず素晴らしいものであるのだろうが。
動物の声が聞こえるのはどういう意味を持つのだろうと思っていたらなんとそれはきくりん自身のつぶやきだった。乖離、の語が正しいかわからないが、流浪と貧困、過酷な現実から心を守るために編み出した彼女なりの防衛反応なのだろう。
美しい肢体を持つ絶世の美少女きくりんに対し二宮がまた素晴らしい美少年。そして思春期の二人が惹かれ合っているのはそれ以上の理由からである。ふたりとも周囲の普通から規格が外れている。そのことを互いに語り合える、わかりあえることの喜び。
抱えていた思いを全部吐き出したとききくりんは自分の醜さに気づき涙をこぼす。そのきくりんの姿は醜くない。醜さを自覚できる魂は醜くない。
監督は渡辺歩氏。フィルモグラフィーを見るに目を引くものは過去作にないがそれは俺がどらえもんを全く観てないからだろう。
アマプラリンク
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