通常映画で使用される神のカメラ(登場人物たちからは見えないカメラ)ではなく、すべての映像が「作品世界の中でも実体あるカメラ」からのもの。そういう体(てい)でともかく構成されている。映画じゃないよ、現実にあったことだよと。
よくできた映画だった、傑作だったけど、少なくとも前半部分はまた再び観たくないね。出来が良すぎて。高校、学校、青春という場の残忍さは戦場の酷薄に匹敵する。と言い切ってしまえばもちろんそんなはずはないのだけれど、しかし我が身を振り返るにやはりそれはこのような、二度と経験したくない苦痛の連続ではなかったか。ニホンばかりかアメリカもそうなのであるか。あの時期というのはああいう形にしかなり得ないものなのか。学祭もその華やかさと同じだけの悪意と絶望に満ちている。
物語は陰惨、悲惨な結末を迎えたけれど、エンディングの爽やかさはせめてもの救い。「俺達、計画した通り、ここまで来たぜ」。うん。あの終わり方はいいよね。
主人公、のはずだったアンドリュー。彼は力をコントロールできなかったけれど、もちろん彼の意志の弱さだけ断罪できるはずもない。彼をあそこまで追い詰めた諸々、とりわけ父親の駄目っぷりは同情にあまりある。弱くて駄目な分家庭という専制王国で偏執的に父権を振り回す典型的ウワイトトラッシュ。あいつは落ちて死んでよかったと俺は思った。
終盤の大立ち回りは派手だったねえ。大友克洋の夢を実写映像化できる時代が到来したんだ。
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