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君よ憤怒の河を渉れ



 フンドなんだってね、映画の読みは。ずーっとフンヌだと思ってた。つーか普通そう思うだろう。なんでそういうことになったんだろう。

 むかーしテレビで観た時の印象で「こんな面白い映画観たことない! 俺の邦画ベスト1はこれ!」ってずーっと思い定めてたんだけれども、うーん。今回BSプレミアムの録画で観直してみて、流石にその評価は変更せざるを得ないよなあ。いや、面白かったんだけど。面白かったけど、その前にいろいろ変w
 なんなんだあの音楽w メインタイトルの「ダーヤダー♪」も時代を感じさせて爆笑なんだけど、なによりアレだよ。「おやおや高倉さん、車窓からなにやら発見した御様子。さっそく下車してみることに」とかナレーション被りそうなあの音楽。あれが一箇所演出を間違えたんじゃなしに繰り返し繰り返し、これでもかというくらい場違いなところで。
 だから再読もとい再観した感じ、ハードボイルドアクションというより「血を吸う宇宙」と同じ、カテゴリー的には「変な映画」になっちゃってんだよね。ギャグですか、と。

 原田芳雄も「いかにも」だよねえ。長髪。もみあげ。サングラス。笹沢左保っつったらこれですよ。大藪春彦も。こういう表紙の本並んでたよねえ。銃とかヌードの女、車とかが配されてるの。時代。当時は最高にイケてたわけですよ、こういうのが。いまじゃギャグですよギャグ。「なんかあったんですか?」って心配される。

 でもあの新宿暴動はいま観ても紛れも無く名シーンだよね。健さんが機動隊のジュラルミンを馬で突破していく。昭和残侠伝シリーズがどのように受容されたものか考えれば、健さんをまさに正しい形で同時代に活躍させている。

 昔観た記憶がだいぶ、つーかほとんど忘れてるので、ラストのあれが驚愕の結末として新鮮に楽しめた。えー! って思った。すげえすげえ。こういうのありなんだ。
 演出は音楽含め概ね稚拙であり天才を感じさせるものは佐藤純彌にないと思うのだけれど、そうじゃあねえんだと。なんのギミックもなしに時系列で物語を語っていく膂力と、そして心意気。映画はそれでいいんだよと。
「おまえはなにかい、テクニックが見てえのかい? 俺は違うな。俺が観てえ、撮りてえのは、悪と闘う男の物語だよ」と。


 目の前で新聞を読む男。濁流。製薬会社の陰謀。三つも重なりゃ偶然じゃないでしょう。アンドリューデイヴィス、明らかに観ているし、本作を土台に映画逃亡者を撮っている。同じ逃亡者モノということでオマージュを捧げたのでしょう。



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