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ベルセルク讃



 すっごい良かった。「とりあえず見終わるため。これを全部見終えたという義務を果たすため」みたいな、仕事みたいな気持ちで我慢、辛抱しながら深夜アニメ見ないで済んだの、ほんと久しぶりなんじゃないか。
 もちろん原作がとてもいいんだろうけど。でも、そのいい原作を平然と潰してしまうのがアニメ化、映画化の通例なんだから。
 剣劇、活劇として痛快であるにとどまらず、人間とはなにか、人性の闇とは、そして世俗を超えた形而上の問題意識をも伺わせる内容に興奮した。最終回も大盤振る舞いてんこ盛りだったし。
 うつし世はイデアの影、射影でしかないみたいなネーム、いいよねえ。
 ルカ姐もいいよねえ。すっごくいいキャラクターだよねえ。言うこといちいち含蓄深くて人間物凄くできてるんだよねえ。そして最後の最後ニーナの独白もよかった。そんなルカ姐の強さ、正しさに耐えられずそれを憎むしかないのだ。弱い人間は。そして弱い者同士つるみ傷を舐め合うしかない。

 んでもちろんなによりもガッツ、臓物という名の主人公。純粋力(ちから)としかいいようのない魁偉の男。
 あのねえちゃん(なんとかいう部隊長)が大詰めで「この男の言うことやることに惹かれて惹かれてしょうがない」みたいな状態だったけどそれは全く観てる俺自身の状態でもあった。
「お前もちったあ手ぇ動かせ」
「祈るな。行動の邪魔になる」
 いいネームだよねえ。
 惚れたから追いかける、みたいな、色恋感情以上のもんだと思うよ。彼女あそこで棄教してる。つまり、ガッツ教に入信してしまったんだ。もちろん教祖の側に自覚もその意欲もあるわけがない。

 全12回に描かれたのはたぶんタイムスパンで一週間くらいしかない出来事なんだけれど、その背後のもう何年越しの因縁やら重大事件やらが非明示的に透けて見えるのがまたいいんだよね。
 富野氏が理想として語る演出ってこれだと思うんだよね。説明口調の排除。そんでそれを言ってる富野氏自身は全然それができていない憾みがある。説明過多、無駄口おしゃべりキャラクターのオンパレード。

 やや動きにギクシャクした感のある3Dアニメーションだけど、俺は好きだなあ。手描きじゃないことでクリシェ、手垢の付いたアニメ臭さから逃れられてる、そんな気がすんだよね。

 オープニングテーマもいいよねえ。「けして折れない剣をとれ 俺が俺であるために」。よくわかりませんw だけどいい歌。
 平沢進氏の手になる劇中歌もいいんだ。大(おお)時代というか大げさというか。まさに大鉈振り回す圧倒的暴力としてのガッツのテーマにふさわしい。

 来年春、第二シリーズの開始がとても楽しみ。



追記: 無料の原作1~3巻を読んだ。アニメイズム版は原作を適宜凝縮再構成してあんだね。いや、アリなんじゃないすか。長大な原作そのまんまとろとろアニメ化して、息切れして途中終了とかよりは。短期決戦型のアニメ化とかもいいと思う。オリジナル化するわけだし。

 ガッツのキャラクターもアニメ版の方が俺は好もしいな。冷笑系アカウントの如き中2臭さが抜けてて。もちろん原作にあるそれは伏線であるから必要な設定なんだけど。

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