正月にやったテレ朝の録画をよーやっと観た。
前作よりいい。「君の名は」の冗長な部分が刈り込まれて更に良くなっていた。新海誠はより一層進化した。
山手線の外側に立つ代々木会館。
山手線の内側、高台に立つ田端の古ぼけたアパートの窓。
山手線が取り囲む、妙に坂が多く入り組んだ不思議な街。
過去作にも見られた東京という土地(パブリックイメージのそれとズレがある)への愛情が全開。
新海誠特有の「空気遠近法を使わない、精細でビビッド、ほぼ写真データそのままを置換した東京」は逆に色鮮やかな異世界だ。
新海が君の名はで大成功を収め更に多くの企業がその名声に安心して乗っかってきたことも作品にむしろいい効果を与えている。実企業名は異世界、亜東京に圧倒的リアリティーを与え、そして過去作の如くわけのわからない展開てんこ盛りにするわけにはいかないプレッシャー、社会的責任(パトロンに対する)、縛りを作者に与えるからだ。
代々木会館の使用は2020年に傷天を復活させる試みでもあり、それは見事に成功している。ほぼ社会的意義を持たない東京の浮草稼業、その日暮らしの奇妙な愉悦、解放感。
しかし、至福の時間はやはり借り物であったことを容赦なく教えにくる現実。
大久保、新宿、代々木と延々線路を走らせるクライマックスは素晴らしい(新海がこの界隈に格別の思い入れがあることは過去作からも明らか)。それだけに、代々木会館で余計な掣肘を入れることはなかったのにな、とやや残念。あの勢いで一気に屋上まで駆け上がらせて欲しかった。オトナ帝国演出を踏襲して欲しかった。
終盤やたら「十秒ごとにハッと気づく」新海の悪いクセも出ちゃっててちょっとげんなりしたかな。
世界の危機を救うために身を挺するカビの生えたクリシェと遂に決別し得た作劇はエポックメイキング。
二年のズレ、ほんとは逆、は前作を踏襲したうまい工夫。
「先輩」のプレイボーイっぷりがまさか見事回収される伏線だったとは思わなかった。うまい脚本。あれはナウシカオマージュでもある(「星を追う」よりはるかに成功しているオマージュ)。
また鳥居ですか。神道ですか。という不満もなくはないがそれをもって新海ひとりを責めるのはもちろん公平を欠く。漫画、アニメ、世界中の安手のサブカルに瀰漫する安易な神秘主義だから。そして、これがさすがに手垢のついた手法であることに新海が気づきその先を行ってくれることは大いに期待できるはずだ。現に彼はそのように前衛表現を開拓してきたのだから。
コメント
コメントを投稿