BSプレミアム150814の録画をいま頃観る。
久しぶりに観る。好きな映画ではない。二度目か三度目だろう。今回も初見とまったく印象が変わらなかった。
最高にカッコいい独白から始まってその後映画はどんどんどんどんつまらなくなっていく。
照明弾が落ちていくあたりで「わいはなにを見せられているんや?」と途方にくれるのもやはり前回と同じだ。
おかしいんだよね。殺したからって、なんで王になる? みんな崇める? カードゲームじゃないんだからさあ。おかしいでしょ。「狼藉者!」てなぶり殺しでしょ、常識的に考えて。
つか、継がないのかよ! みんな拝んでんのに。まあ継ぐ必要もねえけど。
コンラッドの闇の奥いう話とベトナム戦争、実は全然遊離してんだよね。このふたつをくっつける必然性がない。くっつけようとしてもくっつかない。どこかの時点でコッポラもそれに気づいたはずだ。だから撮影製作は難航した。
王になりたい。なんで? 戦場で地獄を見たから。くっつくか? くっつかねえんだよ。
カーツは狂ったという。戦場で地獄を見たから? ベトコンの蛮行を目の当たりにして? 違うよ。30過ぎて空挺団を志願したときみんな止めたじゃないか。許可が下りなかったじゃないか。それはみんな「おかしいでしょ?」って思ったからだ。そう、おかしい。カーツはもうその時点でおかしかったのだ。
だいたいがそのポリオベトコン腕切り落とし。ほんとかよ? 聞いたことねえよ。この映画に乗れない理由は観る以前にベトナム従軍記には何冊か既に触れていたからだ。そういう人間からすればこの映画は噴飯もので歯牙にもかからないしましてこのエピソードなど露骨な反共デマ以外のなにものでもない。
当然極右のキチガイジョンミリアスの筆になるものかと思ったらどうもマーロンブランドが「俺知ってるんだ」と現場で言い出したことらしい。おいハゲ。お前いつからベトナム戦争専門家になった? つかお前、そんなんそのまま「イイネ!」て採用すんなよコッポラ。デブは自己管理能力がないっつって馬鹿にされるのがアメリカ社会じゃなかったのか? デブの言うこと信じるなよ。ここらへんの手つきがほんとに雑、杜撰だ。
だいたいそのベトコンが北越政府軍だろうが南の解放戦線だろうが、そんなことしてなんの得がある?
それが事実だったら米軍勝ってるよ。共産主義勢力負けてるよ。地元民の歓迎など微塵も得られない。そんなことしてなんになる?的な残虐を繰り返し民心の離反を招いたのはひたすら南越政府軍と米軍だったじゃないか。だから負けた。
っていう史実を徹底的にネグレクトして、この期に及んで「米軍やっぱ強いよな。土人ども相手にちょっとおとなげなかったかな? わりいわりい」的な強がりを、偽史を、無理矢理にでもこさえなければアメリカ人の心は持たなかったのだろう。それがこの映画の興収となった。
ドナン橋のエピソードなんかも如実にそうだ。機械化した近代軍の装備を凌駕する自然の才能。それはほんとだったら解放軍兵士のそれとして描かれるのが順当かつ自然ではないか。ミリアスは意図的に不誠実な嘘をついている。
俺の考える「正しい地獄の黙示録」はこうだ。
CIAの新兵ウイラードは軍を裏切った狂人カーツ大佐の暗殺を命じられる。与えられたのはボロ船と使えないクズ兵士ども。どう見ても重要任務ではない。
川を遡上して目にするのは地獄めぐりのような戦場の現実。どうも聞いていたのとは様子が違う。住民を弾圧し面白半分に殺害するのは明白に南越政府軍と駐留米軍ではないか。
たどり着いたカーツの王国。「君も見てきただろう。これがベトナム戦争の現実だ。さあ、どうする?」「あなたと共に戦います」。カーツは解放戦線の猛将となって米軍を悩ませていたのだ。そこへ加わるにウイラードには何の逡巡もなかった。そして襲い掛かる真の狂人キルゴア中佐の航空騎兵師団。物語はクライマックスを迎える!
このようにすれば物語は難解のなの字もなくハッタリも要せずすとんと腹に落ちる。そして勿論この脚本に資金は集まらない。独裁政権フィリピンの撮影許可、軍の協力も得られるわけがない(こちらも解放戦線と戦闘真っ最中)。
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