いま頃観た。
秘宝で散々な評判を見てきたから「それほどじゃないじゃん」と楽しめた。
ダークナイト嫌いだから、そこらへんで秘宝一般と真逆の評価になるのかもしれない。
ジョーカーは結局のところ脅迫犯であり、「ははは、人間の本性を炙りだしてやったぜ」とか言っても「ふざけんな」としか思えないわけです。人質取って、ひとギリギリんとこ追い詰めて「ほら見ろ、お前も悪だ」って、それは狡いやり方だよ。
ライジングよかったじゃん。悪は滅びて正義は勝つ。ハッピーエンド。それを「世の中甘くないんだ」とか言ってバットマンやらブレードランナーにバッドエンディングを求めて「俺ってオトナ」と酔いしれるのはそれこそ「拓ちゃんのお部屋」から一歩もお外に出たことのない二年生感覚なのではないでしょうか。多少娑婆の空気吸ってりゃ世界の現実は映画に教わらなくても知ってますよ誰だって。
執事の爺さんが夢想したどおりの結末を見ることが出来て、ほんと良かったじゃないですか。あれをぬるいと言うか? 現実になかなかない幸福を観れる、それこそがまた映画の愉悦じゃないか。
しかしまあ、映画としてお話としてかなりおかしくはあるんだよな。爺さん言った通り、「なんであんたが自分でやるんだ」ってことですな。億万長者なんだから金の力で屈強な正義漢をスカウトすりゃいい。いやもっと言えば、それこそ市政を牛耳ればいいわけです。自ら政治家になるなり影響力を行使するなり。ゴッサムシティーの治安を良くするほうがはるかに合理的な解。根本的な治癒。悪人がウヨウヨ日常的に湧いてそれを億万長者が毎晩フィジカルに駆除って、どう考えてもおかしいわけです。そしてその変な状態をどうやらむしろ望んでいるらしいことが透けて見える。爺さんは見抜いているわけです。このひとは倒錯者だと。
毎晩悪党と闘うために街に出撃、というバットマンのお話がもともと「ハードゲイと身体をぶつけたくてハッテン場通いをやめられない紳士」の暗喩なのかもしれないんだよね。
意外な展開、を見せるための無理も多いよね。勝間和代、信頼を勝ち得て核融合炉の管理任せてもらった段階でもう勝利じゃん。ベインを使った騒ぎ起こす必要ないじゃん。
ゴッサムを破壊するためにわざわざ一旦実業家として成功したわけ? 迂遠だなあ。金持ちなったらおかしな怨恨も消えると思うのだが、そういうこともないのか。しかし、ゴッサムとかいう小さい都市ひとつ消滅させて下がる溜飲というのもそれもまたずいぶんちっぽけというか。教団の目的ってなんなのよ。なんで「世界」じゃなくてゴッサムひとつにこだわるのか。
もともとのバットマンにある世界観だと思うんだけど、狭いんだよね。ゴッサムだけで世界が完結してる。それ以外の世界が血肉をもって存在しない。
あの刑務所はどこなのよ。アメリカじゃなさそうだけど、じゃあウェインはあそこ出たあと飛行機でゴッサム戻ったの? パスポートは? 金は?
足場組めばいいよね。あのエントツ。中の物組み合わせてさ。ロープふちに引っ掛けて登るとかさ。現に途中までロープ張ってたよね。
謎の教団刑務所もそして閉鎖都市ゴッサムもそうだけど、食料供給どうしてんのよ。外界との接触ゼロで普通に生活続くわけないじゃん。いろいろとチグハグなんだよね、ノーランのリアリズムって。どうだリアルだろう、コミックの映画化とは思えないだろう、人間の、社会の本質に俺は迫ったのだ、って言ってるそばから初歩的な不自然、おこちゃま世界観が漏出してる。本とか新聞とか読まないのかな、切符の買い方知ってんのかな、服とか自分で買いに行ったことあんのかな、全部お母さんが買ってくるの着てるのかな、って感じ。
ノーランを「現代の革命家」と評した人がいたみたいだけど、ウォールストリート占拠運動のああいう悪意ある描き方を見てなお彼はそう言い続けるでしょうか。金持ちになったノーランがああいう政治的スタンス(貧乏人は富豪を尊敬尊重してそのトリクルダウンで生きろ)をとるのはまあ正直でよろしいとして、犯罪者軍団が赤軍兵士として街の新秩序を守る、ってのはちょっとあり得んでしょ。自分さえ良ければいいエゴイストどものなれの果てがさあ。
チンピラからりんご盗むって、何時代よ。チンピラ、りんご丸のまま持ち歩いてたのか。
フィーチャリングアンハサウェイフィルム、としては完璧でしょう。やっと美人が出てくれた。しかもいろいろと大サービス。
愛の物語であることが最後にわかるのも良かったなあ。
バイクの方向転換、よかった。ああいうギミックで転換させるの。
次代を担うあのひとの存在感、有能ぶりも小気味よかった。
だからあれですよ、モザイク状。ライジングに関してはみんなが言ってるほどひどいとは思わなかったし、といって何もかもが素晴らしい映画でもないし。ダークナイトの胸が悪くなる感、必ず最後に悪が勝つ感がないから俺はまあまあフツーにヒーローものとして、秀作として楽しめました。
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