NHK総合でなんかの隙間とか深夜とかにちょろっとどかっと不定期にやってる赤ちゃん本部長。毎回マジョリティーの蒙を啓く素晴らしい展開なのだがとりわけ今回は秀逸。そのスタンス自体の陥穽を批判的に見つめるメタ的視座の必要、を説く力作なのだ。
「紙とペンでよりよい社会を作るため」というセリフで明らかなように社内報担当岸谷芽衣は進歩的ジャーナリズムを象徴する人物。その彼女を「別名 善意の悪」と呼ぶほど本部長は彼女に手を焼いている。
根掘り葉掘り在日コリアン三世としての境遇を訊き出される新入社員の一ノ瀬君。「え! 社内報には載せないで下さい」「なんでですか? 知ってもらういい機会だと」
「もうやめろ岸谷! 理解されたいわけじゃないんだ」。制止する本部長。しかし岸谷には馬耳東風。「あー今日もええ仕事したでー。あ、健康診断の結果届いてる」
マイノリティーに、被害者に、当事者になることでしか理解できないもの。「あなた自身が声を上げていかないと世の中よくならないのよ!」と取材対象者にだけアウティングを強要し生活の資とエーコトシタ感を同時に得る鈍感な者たち。たった五分の物語に「味方然としてすり寄ってくるジャーナリスト、社会活動家たちにマイノリティーが味あわされてきた苛立ち、苦悩、困惑、怒り、絶望」が見事に凝縮して描かれている。
差別の苦しみは差別主義者だけがもたらすものではない。出色の名作。
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