やっぱ映画館観に行っとくべきだったなあ。五千四百円で三枚組特装青円盤買うほどじゃなかった。一回観りゃまあいいかなっつう。いや、面白かったけれども。
版権を超えた音楽の横断的使用、という伝統、実績を作ったね、庵野秀明は。もちろん始祖は「温泉わくわく大決戦」の原恵一だけれど。
ヤシマ作戦のテーマにもちろん血がたぎったけれどもしかし、ちょっと乱発され過ぎたかなあ。それ繰り返すばっかで全然事態好転しねえじゃん、やっぱいっちゃん最後の盛り上がりにとっとくべきだったんじゃない? って思ってたら最後の最後「なるほど」。ゴジラ映画だから、ちゃんと花持たせたわけね。
んでその場面がもう子供の夢そのまんまで大爆笑。ソフビの怪獣、プラレール、トミカで「ういーん、ガシャーン! どがーん」遊んでんのとおんなじ。それをリアルに大真面目に映像化する大馬鹿度にひとりスタンディングオベイション。
音源あれだよね、たぶんオリジナルだよね。モノラルっぽいし古色蒼然とした微妙に下手い演奏。でも「そこがいーんじゃなーい(©みうらじゅん)」。この場面にズッパまり。だってこの映画は「巨大生物との闘いを最新CGでリアルに描いた作品」ではなく、「ゴジラ映画を如何に忠実に再現するか」を目的とする、まさにオマージュの為のオマージュ映画だから。特撮映画をリスペクトした特撮映画なのだから。
ピアノが不協を奏でる瞬間がもう狂気そのものでいいんだよねえ、このスコア。画面と見事にシンクロしてる。
庵野シューメイお得意のイラチ、わかりきった展開はサクサクぶった切りますよ編集は心地よく最初はこれは面白い映画になるぞと興奮したもんだが、さすがに中盤以降ダレたね。どんなに上手に編集してもやっぱあの政府描写、床屋政談の連続は冗長だよ。
大友、押井、そして庵野ら日本を代表するオタククリエーター(&その消費者)達の戦後民主主義、現行憲法に対する憎悪の深さには目を瞠る、というか辟易させられる。どうやら親でも殺されたらしい。
そしてそのポツダムだかヤルタだか現行世界秩序に対する憎しみの裏にどういうわけか英語を流暢にしゃべる帰国子女への憧憬が張り付いてる。
しかしこれ、まさに究極のおのぼりさんたるゴジラのアンビヴァレンツそのものなんだよね。なんか知らんが東京に、東京駅に憧れて、そこで面白くないことあったからっつって大暴れし始める。「東京なんか嫌いだ。みんなぶっ壊してやるッ!」つて。だからゴジラ映画を撮る監督のモチーフとしては全く正しいのかもしんない。
石原さとみ演ずるなんとかいう(名前ちゃんと調べる気にもならない)女版ルー大柴みたいの、顔の基本造作といいメイクといい立ち居振る舞い言うことやること俺全部大嫌いなんだけど、そんなこと俺が言っても無駄なことだ。庵野シュウメイはこういう女が好きなのだ。惣流といい式波といい、もう明らかじゃん。
「好きなことだけやって、何が悪いんだよオッ!!」。ツンデレ。ワイマール体制打倒。自衛隊。米軍兵装。電車。建機。自分の好きなものを全部詰め込んだのが彼の映画だ。文句ある奴ぁ自分で自分のゴジラを、自分の映画を撮るしかないのだ。
そういう諸々の不満はあるにしろ、特撮映画としてもうこれは頭一つも二つも飛び抜けた、ゴジラ映画のあるべきハードルを一気に数段上げてしまった大傑作であることは間違いない。
破壊シーンの凄さは言うに及ばず、上空に光条が何本も走る中作戦指揮が執られ続けるあの光景は「世界がもう半分壊れかかってる」感半端ない異様さで俺はもうクラクラ来た。本作名場面中の名場面だと思う。
「礼には及びません。仕事ですから」
エライことなってる現場で動揺、恐怖を圧し殺し訓練どおり手順通り淡々と作業を進める。これもタワーリングインフェルノとおんなじ、戦争映画である以上に働くおじさん系映画なのだ。
官邸が消滅しちゃったんで農水大臣から繰り上がってラーメン食べてるひと、あのひとがもうこの映画出色のキャラ。
武張って日本刀振り回したり腹に突き立てたりするだけがニホンじゃないんだよね。忍の一字、ひたすら頭を下げ続けるだけの根気と膂力。風采の上がらない愚昧と見えたおじさんが一番大事な所で大事な役割を地味に果たすカッコよさ。俺ん中では主人公だね。ヒーロー。
「谷口。まず君が落ち着け」
そう言ってドン! ミネラルウォーターぶつけんのも素晴らしくよかった。いい気になった主人公が主人公気取りに激発するステレオタイプを許さない。冷や水ぶっかける太っちょメガネさん。
あのひとも大人(たいじん)の風格、懐の深さを感じさせるいいキャラだったなあ。
東日本大震災、福島第一原発事故のイメージを意識的に投入していることは明らかだが、不謹慎のそしりを監督として全面的に引き受ける覚悟、気迫もまた画面には漲(みなぎ)っている。破壊を描く人間として、特撮屋としてこれは業なのだ、俺は悪役に徹する、と。
デルトロが抜け抜けとやっていることなのだ。不謹慎の声に怯んでいたらパシフィックリムを超えることはできない。日本に対するアンサーたるその作品に日本も答えを返さなくてはならない。庵野シュウメイにその重責が課せられるのは彼の天才から言って必然なのだ。
第二形態っていうんですか? 究極のブラックジョークだったよねえ。あんなふざけた顔の化け物に無惨に殺されていくというね。
入水自殺した博士の意図、よく、否、全然わかんないよねえ。
暗号にするなよ。平文で書けよ。つか、死ぬなよ。
コメント
コメントを投稿