スキップしてメイン コンテンツに移動

「ブレードランナー2049」

 ★★★☆☆。72点。



 観てる最中は「失敗だったかな? レンタルにしときゃ良かったかな? 円盤買ったの失敗だったかな?」とセコい思いがしきりに去来したけど、最後まで観て「うん、まあまあじゃねえすか」と。良かったんじゃねえすかと。
 そりゃ手放しで大傑作だ、とは思いませんよ。オリジナルを超えることなんかできやしない。できるわけがない。リドリー御大が自身でやったって無理だろう。あれはあの時代に予算納期様々な制約に掣肘されシナリオもなんもかんもぐちゃぐちゃになった、その刺々しい修羅場の混沌が奇跡的に産み出した芸術品なんだから。ハプニングアート。そんなもん、再現性のあるはずがない。
 どだい超えられないってことはわかった上での2049、と割り切って見れば、結構いいとこはあったんじゃないでしょうか。

 例えば、初代BRに当然あって然るべきだったスピナーファイト。おかしいでしょ? メインの、売りの未来メカなのにただ移動手段としてタクシーみたく飛ぶだけ。そんな肩透かしの失望を30年越しに最新デジタルエフェクツでちゃんと映像化してくれたんだから。あるべき活躍を。
「革命とか解放とかそんなん無理に決まってんじゃん。善も悪も見方で変わるさ。部屋の隅で膝を抱えて何もできない僕」というシニシズム、価値相対主義、ポストモダニズム。オリジナルはリドリーの傑出した芸術だったが、押井、ノーラン、庵野その他凡百のクリエイターに与えた影響、呪縛は決して気持ちのいいものじゃなかった。
 2049は続篇、嫡出子自身がその呪縛から逃れているのが好印象だった。ジョーは「正しいことがしたい」のだ。これは期せずしてフォースの覚醒、ベイビードライヴァーの気分とも通じる。斜に構えた冷笑主義に次世代のクリエイターが引導を渡している、そんな時代の空気を感じる。

 俺は「完全版」、もっと言えば荻昌弘解説月曜ロードショー日本語吹き替え版原理主義者だから、ふたりは緑の沃野で「末永く幸せに暮らしましたとさ」であって欲しい、あのハッピーエンディングで正解なんだという立場である。それはそれで、今回のは別の時間軸、別の世界線のあり得べきストーリーとしてまあありなんじゃないかと思った。レイチェルにもデッカードにもつらい運命が待っていたけど、それが不幸のための不幸、絶望だけが人生さみたいなおとなのフリをした話に堕していなくて良かった。
 雪が静かに降り積むあの瞬間に静かに流れるあの旋律。ジョーも自分の命のろうそくを完全に燃やし尽くした。ロイバティーと同じように。燃やすに足るなにものかのために。
 デッカードはまた彼らに助けられたが、今度のデッカードはもう「膝を抱えて何もできない僕」ではない。

コメント

このブログの人気の投稿

インテルグラフィックスの設定で動画の白っぽさを解消する(白っぽさシリーズ、その3 たぶん完結篇)

 タイトル通りです。  なにげにね、ほんとなにげに、さしたる予感、確信もないままインテルグラフィックスなにげにいじってみたの。そしたら、この間(かん)の懸案が一瞬で解消してしまった。   HDMIさん 、 サイバーリンクPowerDVDさん 、いわれなき嫌疑をかけていままで悪し様に罵ってすいませんでした。  悪いのはわたしの無知でした。  動画の白っぽさを、なくす。  グラフィックスビデオ設定のコントラスト自動調整を、オフればいい。  後出しジャンケンだけど、答えが出てしまえば「なーんだ」、だよね。  確かにそうだ。明暗の自動調整にノイローゼなってんなら、それ切ればいい。  いやもう、白っぽくて白っぽくて(露出不足でラボから上がってきた昔の印画紙みたい)、また瞬間瞬間に不自然に画面の明るさがディジタリーに、階段状に変わる、明らかにおかしい感じの動画、一瞬で正常化してしまったよ。 「あらこの場面ちょっと暗いわね、こんなんじゃなにがなんだかよくわかんないでしょヨッちゃん。おばちゃんがいまここちょっと明るくしたげるからね」って、パソコンの中のおばちゃんがいままで世話焼いてくれてたんだよね。  僕はおばちゃんに暇を出すことにしました。  俺ヨッちゃんじゃないし。  ノートパソコンの設定としてはデフォルトがそれっての、たぶん正解なのかもしれないね。映像ソースの再現忠実度よりも視認性。  外付けモニターの購入で小さい画面では全然わかんなかった、気にもならなかったことが見えてきた。一挙にアラが見えるようになってしまった。デカい画面という、そういう「量」が「質」のこと炙りだすのってなんかこうあれだよね、示唆するものがある。  この間の死闘、暗闘は消耗したがしかしまたその分得ることも実に多かった。いままでそこらへんの知識まるでなしにパソコンで動画見てたんだよね。実に十年間くらいはおかしな設定の変な色、明るさのままで。「きったねえなあ」ってぶつぶつ文句言いながら。  グラフィックスのビデオ、調整できるパラメーターは他にもあるので、まだまだ勉強すべきこと、更なる発見、正解があるはずである。しかし、懸案の巨大な山はひとまず乗り越えたんだと思う。  しばらくは精神の安定を取り戻せそうで一安心である。 * * *

Thinkpad E560のSSHDをSSDに換装する 1

 この10月にサムスンのSSD(Samsung SSD 500GB 860EVO)を購入、換装しようというのは以前から腹積もりとしてあったのだが、奇しくも9月末、一万二千円くらいだった価格が一挙に9890円に下落。とてもタイミングが良い。幸先が良い。  土曜の午後郵便受けに届いた。うん、楽でいいね。  普通に郵便で送りたくなるのがわかる軽さ。  準備はもうしてあったので早速開封、換装作業開始。  マニュアル同梱。サイトへの案内。   サムスンのサイト を見ると移行ソフトがちゃんとあるっぽい。特に購入者コードなど必要なく、誰でもダウンロードできる。  フリーソフトよかひと手間省ける感じ。もちろんサムスン製専用ならではの利便性。  こんなんにつけて USB3.0で接続。 いきなり「あと2時間半」とか脅してくるけど、数字はガンガン減っていく。  130ギガほどのシステム&データ移行、37分で終了。  さあ、そしたら今度は物理交換だ。  電源抜いて、  電池外して、  裏蓋をプラスドライバーで外す。この3つのネジはどっかいっちゃわない式。ゆるめてもついたまま。  ネジゆるめてもプラの爪が複数箇所マザボの爪に食い込んでいる。だから蓋は素直に開いてくれない。  手の爪やらマイナスドライバーやらでこじ開けるとたぶん筐体に傷が付きそう。  PC、スマホ修理用の「固くてやらかい隙間こじ開け用プラ棒」なんかが欲しいところ。  俺は財布ん中のヤマダ電機ポイントカードで代用。隙間に挿してこじ開けていく。 ガジガジになった  ネジ4本外す。ハードディスクを外す。固着してるのでちょっと手間取った。  小ねじ4本外してハードディスク固定用の枠を外す。  シーゲイトのSSHD500ギガ。これはサムスンSSDの空箱にしまっちゃいましょう。  7ミリ厚のSSHDを7ミリ厚のSSDに換装。  逆手順で戻して行く。  蓋をネジ止め。上から爪あるっぽい複数箇所を押さえてはめ込む。パチパチパチパチ。  完了。電池、電源戻して、  電源投入。 (つづく)→  htt

チコちゃんに叱られる

 いまのチコちゃんはこうだけど、  初回パイロット版(17年3月24日放送)のチコちゃん(初号機)はこんなでした。  明らかに造形的には奈良美智リスペクト。  茂木さんに正解を言い当てられて驚愕!  出たw 「出ってもうたー♪ 大阪弁がー出ってもうたー♫」  当然パイロット版放送後「なんか不気味じゃないか」「もうちょっと可愛くできない?」等々の局内検討を経て決定稿、弐号機チコちゃんになったと想像するのだが、俺はこの初回チコちゃん大好きなんだよねえ。たぶん製作スタッフも掣肘さえなければ初回のままで通したかったんじゃないかなあ。そんな気がする。  しかしこの初号デザインのままであったら、いまの国民的人気にはやはりつながらなかっただろうなあ、とも思う。  ともあれ、チコちゃん、岡村さん、紅白進出おめでとう! https://www.nhk.or.jp/kouhaku/topics/topics_181218.html