「八日目の蝉」もそうだったが角田光代の原作は日常の魔を描くのがうまい。地獄は彼岸の彼方ではなくいま普通に生きているわたしの五センチ隣に常にある。常にその深淵を開けている。わずかにみじろぎするだけで生きながら地獄に突入することができる。
もう冒頭から最後まで見るのがつらく30分ずつちびちび観た。でなきゃ体が保たないほどの凄まじい緊張感が延々と続く。
冒頭の狒々ジジイが最後最高の人徳者人格者と判明する展開が鮮やか。これは勿論ムービーマジックでそのように演出しているのだから当たり前だが、最高の効果で梅澤梨花と観る者を叩きのめす。
白馬の王子様こそが最高もとい最低のクズだったという。
この価値の大逆転劇はナウシカ黄金の七巻を彷彿とさせる。
タイトルの意味がわかる瞬間の絵も良かったね。
隅より子(小林聡美)vs梅澤梨花(宮沢りえ)の最終対決もこれまた殆どナウシカの七巻、火花散る哲学問答で、これはもうナウシカの実写映画化と言って過言ではない。主人公梅澤梨花もナウシカも、献身という病に罹患した狂えるシモーヌヴェイユなのだ。
「八日目の蝉」同様に「教団」がここにも登場する。角田光代の核をなすものなのかもしれない。
ラストに登場する手紙の相手。その瞬間に判明する「かわいそうなひとを救ってあげる」という慢心。助力の有無はひとまず措いて、彼を生かしているのは何よりまず彼自身なのだ。
コメント
コメントを投稿