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録ってあった地方局連合ドラマ「おいしい給食」をいま頃観た。めちゃくちゃ面白かった。
孤独のグルメのエピゴーネンは今日日(きょうび)いくらもあるけど、これ群を抜いて肉薄してんじゃないか。否、追い越してんじゃないかとさえ疑う。
なぜなら、泉昌之出世作「夜行」の忠実なドラマ化があるとしたら、まさに本作がそれではないかと思えるからだ。久住イズムの勘所を見事におさえている。
食べる順番の綿密な脳内シミュレーション。ダイナミックな独白。計画が破綻したときの大仰なリアクション。まさかこれを、松重豊に負けず劣らず好演できる役者さんが他にいたとは。
不明にして市原隼人さんという役者さんのことを俺は全く知らない。なんとも端正な美男子ぶりに見とれてしまったが、このひとキアヌリーブスにクリソツなんだよね。キアヌリーブスが給食食いながら大真面目に独白繰り広げんだからそりゃ面白いよ。
たぶん神回と言っていいだろう、焼きそば回におけるあのキレッキレの演技はなんだ!? アフレコも上手なんだよね。爆笑と同時にもう感動、感心してしまった。
すべてが名場面なんだけど、武田玲奈(このひともまた自分の役どころをよくおさえて好演している)とのあのやり取りがまた素晴らしかった。
「ところで。御薗先生は土曜日はお弁当ですか」
「はい」
「見せて下さい」
「嫌です!」
脚本といい間合いといいすべてが完璧。テレビドラマは失望するのが通例なのでほんとにいい意味で裏切られてばかりだった。

(ふー。
 ごちそうさまでした)
 からの、
(……ん? なんだ?
 なにをやっている?)
 この「型」がいい。

いとうまい子がまさかの給食のおばさん。全篇マスクをしたまま、若干なまりすらある給食のおばちゃんに完全になりきっていた。この贅沢な、キャスティングの無駄遣い。いまなお現役の大物美人女優がこの配役を黙々とこなす姿勢にまた感激である。

また武田玲奈の色香たるや。サイズを誇るのとは違う存在感ある胸。全身映る瞬間など「プレイメイトか!」と思うほど均整のとれたプロポーション。クラクラきた。

そして、なんと言っても彼、神野剛。神の業。なんという大仰な名前の生徒なんだ。これがまたまったく名前負けすることなく、給食という宗教の狂信者を見事に演じ切っている。
最終回、ヒロインの問いかけにも心あらず、ただ彼の心は「ごはんを運んで来るトラック」に向いている。こんな感動的かつ狂った青春ツーショット、観たことない。

孤独のグルメのエピゴーネンは「取って付けたようなドラマとかいらんから食うとこだけやれや」と酷評されることが多い。そう、概ねその批評、指摘は正しい。ところがだ。
初めて味を感じる余裕を持てた君山さん。
吹奏楽回で明かされる御薗先生の過去。
「うまいな」。机を並べ共に食べるカレーライス。
立派にドラマとして、感動的に成立しているのである。

劇伴、サウンドトラックもいい。恋はみずいろ、ジェットストリームのコピーなど芸が細かい。ツボをおさえている。

毎回監督、脚本が別人なのに作品のトーンにばらつきがない。全体を統括するキーパーソンがいるはずだが、やはり永森裕二氏がそうであろうか。地方局合同製作ドラマのヒットメーカー。くろねこルーシーもねこタクシーも俺は大好きだ(いま気づいたけど、コワモテの教師が「ちゅぽん♥ ちゅぽん♥」て独白すんの、猫侍の文法だ)。
30分ドラマの要諦をなにか掴んでいるひとなんだろうね。一時間よりもむしろタイトに語れるそのリズム感とか。
そうだ。「恋愛だけじゃないでしょ? 人生」。これに気づいた途端テレビドラマという閉塞したジャンルは一転、無限の沃野に変貌するのだ。




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