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NHK「未解決事件 オウム真理教」

6リットルどころか、70トンほんとは使うつもりだったという。いままで知らなかった。
むかーし、月刊プレイボーイがまだ健在でずっとずっと元気だった頃、なんか気持ちーの悪い翻訳小説が載っていたことを思い出す。
世界の救済を説く新興宗教が空から世界中に福音のカードを撒く。そのカード、実はすんごい効き目のウイルスだか毒だかが塗ってあって、防疫処理をしてあった5人の幹部信者以外は人類絶滅、とかいう救いの全くないSF小説だった。挿絵もインドカルト風、ニューエイジ風で大変に気持ちが悪かった。センターフォールドでオナニーする中学生坊主にとって邪魔なページであったことこのうえない。
麻原もこれ、読んだのじゃないだろうか。もしかして。
小説の最後の1行を不思議と覚えている。生き残った5人の選民はたちまち嫉妬と憎悪から殺し合いを始め、勝ち残ったひとりがつぶやくのである。
わたしは、シヴァだ。

今回発見された幹部向け極秘説法カセットテープから、「選挙に負けたからやけになって武装先鋭化に走った」という定説が覆った。麻原は最初から世界を壊滅させるために、あえて頭の弱そうな、心の弱そうな、与し易いボンクラどもを真理をエサに糾合して教団を結成したのであるらしい。

松本智津夫の殺戮欲求、難解なようでいて実はそれほど難解でない月並みな感情ではないだろうか。今般、女性誌、スポーツ新聞、片山さつきが生活保護糾弾キャンペーンを繰り広げている。そこで煽られてる人たちの殺害欲求が難解で特異な感情であるとは到底思えない。浮浪者だったヒトラーは「自分以下」の存在を求めて貧乏ユダヤ人を標的にした。ヒトラーを松本はこよなく愛し尊敬した。
そこには出生が強いた鬱屈した復讐感情、ほど文学的な陰影もない。松本の同窓生の話から伺えるのは体育会系ボスの傲慢な支配欲だ。「俺王様。お前ら奴隷」という幼稚な世界征服欲。
「わたし、もう半年も洋服買ってもらってないのよ! それなのに、あいつら、あいつら……結婚したわたしが、わたしのほうが、人生勝ち組だったはずなのにー!」
麻原にたぶん「深い闇」なんて、ない。文学的主題になりえない、する必要がない、貧乏主婦と同レベルの底浅い嫉妬、怨恨しかそこにはなかったのではないか。

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