「何よ真昼間から」
「夜でなければならんという法はないだろう?」
「どうやら私を斬る理由を隠さねばならん。そこに理由があるらしい」
「聞いているのお前たちの焼き餅だ」
「己れより美しいものを責める女心はいささかの哀れを誘うが、ここまでいくと己れの醜さを己れでさらけ出す以外の何物でもないと知れ」
「そうはいかん。総じて男は美人の肩を持つ。臼が餅を搗いてみせるのはお前たちということになる」
「俺は肉親のしがらみに背を向けている人間だ。いやむしろ憎んでいる! それが返事だ」
「この世に釈迦もキリストも、いわんやジアゴなどという神のあるはずがない」
「馬鹿な。神が人をつくったのではない。神こそ人によってつくられたのだ」
「お前は神を信じることによってお前自身を誤魔化しているに過ぎない」
「もっと悶えろ。悶れば悶えるほど抱きがいがあるのだ」
「見ろ。神を信じ、神の加護をひたすら念じてきた者がことごとくかばねと化した。これでもまだ神があると言い張るのか!」
「ある! あるとも!」
「ない!
喜ばれずしてこの世に生を受け、白々しい身と冷たい風に吹きまくられて生きてきたお前は、ひたすら神にすがりついた。そこまではいい。だが人間の持つ心の弱さと迷いにつけ込み、神の名を振りかざし、神の美名に隠れて己の私利私欲を満たす! このサエグサ右近は生かしてはおけぬ」
「ほざくな! 妖剣に狂った貴様はどうだ! どちらが正しいかの答えは、どちらが死ぬかによって定まるのだ」
「俺の手で息の根を断つ。それが同じ星の下に生まれた、せめてもの情けと知れ」
「やかましい!」
「円月殺法。ジアゴへのみやげによく見ておけ」
脚本、高岩肇。
音楽、渡辺岳夫。
監督、池広一夫。
渡辺岳夫(ガンダム)の音楽は素晴らしいのだが、こと眠狂四郎シリーズに限ってはこの洒脱な旋律、失敗している……と言っては言い過ぎか。ちょっと違う、の感がある。これまでのあの大時代(おおじだい)な、古色蒼然とした劇伴(斎藤一郎)のほうが作品世界にそぐわしい気がする。
ガハハおやじの哄笑そのものでいいんですよ、旧版の旋律は。
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