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ゼロダークサーティー



辟易する、二度と見たくない捕虜拷問シーンだが、「拷問者は拷問に怯えなければならない」ことが映画を見続けるうちに判明する。つまりこれは前作「ハートロッカー」と同じ、自身の身を危険に晒す爆弾処理班の話なのだ。通常志願するものはいないダーティーワーク。
尋問に長けると見えた執行官が内勤への転属希望を口にする。猿は殺された。組織内部にすら反感、憎悪を持つ者はいるのだ。そしてそれは内通、情報漏洩にもつながっていく。
あのシーンで誰もが「おっ」と軽く驚いたのではないか。太っちょ長官が社食(CIAのw)で経歴を尋ねる場面。有能な彼女はキャリア組ではなかったのだ。
ビグローは初めて自分の作品に、同性の似姿を描いたのではないだろうか。「男の世界」に激しく恋い焦がれながら、自身は絶対に参与できない不能感。拷問もペシャワール探索もビンラディン邸突入も、その指揮はできても実行行為からは排除される。
「捕まってオカマ掘られちゃうかもっ! ……いいけどね♡」
ここで破顔大笑するレイバンを掛けた主人公。自身がアメリカの腐女子であること、その堂々たる表明であろう。監督自身の。

ウサマビンラディン邸攻撃作戦を描いた映画だからそこが長尺になるのは当然だが、なんという臨場感、緊迫感の持続だろう。40分の長尺でありながら弛緩することがない。「この映画いつ終わるの?」という退屈がない。
墜落。住民の蝟集。現場で想定外のことが次々に起こり、もたもたと手間取ることを余儀なくされる。リアルである。リアルである、っつーか実際起こったことを描いてあるのだろうけど。「現実」というものの感触をよく描けている。

最後の落涙は任務達成の高揚か、それともまったく別の感情か。俺にはわかりませんでした。

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