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ゴジラ、1954。




いまごろ初めて観ました。
そんなねえ、見るもの聞くもの何でもかんでもディスってるわけじゃないんすよ、自分。でもねえ。これもねえ。もう観るのがつらくて。退屈で退屈で退屈で。ちびちび、一ヶ月以上かけて観ました。
「昔の名作」って、そういうの多いよね。当時にしては、っていうのがどうしてもあると思う。その間に演出技術も特撮も文法もどうしても進歩してしまうのだし。
あのそれ5秒くらいで済ませません? なんでその会話三分かけんの? って場面が多くて多くて。能ですか? っていうくらいに、あらゆるものがスローモー。

昭和29年、1954年。敗戦からわずか九年。
反原水爆の文脈で語られること多い作品だけど、東京火の海のシーンを見るにここで表現されているのは明らかに東京大空襲の記憶であり、ゴジラに仮託されているのは日本軍を最終的に凌駕した圧倒的なパワー、連合国軍、アメリカ合州国と見るのがむしろ素直な見方だろう。
「ちっきしょう」という学帽少年のうめきは、帝国再興、再軍備、捲土重来の意志ではないのか。
登場する軍隊も明らかに警察予備隊でも自衛隊でもなく国軍でしょあれ。
GHQ検閲の余燼も当時依然くすぶっていたはずだ。敗戦で一旦は打ち砕かれたかに見えた大衆ナショナリズムは、それと明白には認められぬ形で、巨大な異形の怪物として復活、顕現したのではないか。大衆、映画人双方に、直接の表明を避ける心理が働いていたとすれば。そうだ。ゴジラは共犯関係の結節点にその幻像を結んだのだ。

あそこは良かったよね。高圧鉄塔のグラフィカルな、ノイエザハリヒカイトな並び。明らかにこっからの引用だよね、ヤシマ作戦(新即物主義と国民統合の親和性を庵野秀明は皮膚感覚レベルで理解、知悉している)。
あと、なんとか爆弾もって海底へ、は日本沈没のN2爆雷にオマジュられているんだろう。

河内桃子フィルムだなあ、俺にとっては。ゴジラどうでもいいっつーか。どうせどうでもいい女優が出てんだろ? みたいに勝手に思い込んでたんで、これは意外だった。生稲晃子に似たスレンダーな美人。
あの三人の関係がよくわからなかったが。俺最初宝田明のあいつと眼帯の芹沢博士と、一人二役かと思ってた。顔の区別がつかなくてさあ。同一人の中に潜む善と悪、みたいな演出かと思っていたのだが。

人々に大人気のゴジラっていう、その理由が、観ることでますますわからなくなった。これのどこが面白いのか。銀座松坂屋を、国会をぶっ壊す姿の何が愉快なのか。たぶんファンは「男の子」なんだろう。そして俺は性別は一応男なんだろうに、まったく男の子成分を血に、細胞に宿していないんだろう。たぶんそういうことなのだ。

俺はたぶんブルースリーの映画にケチをつけるのと同じ愚行を犯しているのだ。
ブルースリー映画が映画としてかなりひどい出来であることはリーマニアですら肯う事実であろう。しかし彼の映画の魅力はそんなところにはないのだ。
少年たちはリーの、ゴジラの、フィルム上に躍動する強靭な肉体に魅せられたのだから。

事情はよくわからないけど首都を目指してやってくるよくわからない強大なもの。数多の後続する作品(アキラ、沈黙の艦隊、巨神兵、エヴァ……)のモチーフ、その原型を創出した、その功績は当然にあるとは思う。
理由も目的もわからない、そのことがむしろ、多くの人に「補完」の必要性を喚起したのだろう。俺はこう思う。こう解釈する、と。

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