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ボーンスプレマシー



  俺最初逆打ちで観たんで。アルティメイタム、スプレマシー、アイデンティティーという最悪の観方したんで。それでも「話よおわからんけどこれ面白いなあ、凄い映画だなあ」と。
 今回順繰りに観直したらまあ話よおわかることわかること。また一層面白いこと面白いこと。いやよく出来てるよこの映画。

 任務で殺したひとの遺族んとこ謝りに行くスパイ。これ、ボンドとかゴルゴとかネット民とかから嘲笑われる行動だよね。「お花畑wwwワロスwww」って。
 でも、この描写があるから、ボーンがこういう人間だから、このシリーズは007を凌駕する傑作になったんだよね。007っていう古いフォーマットの息の根を完全に止めたんだよね。
「甘ったれんな! 人生厳しいんだ」「俺って非情。俺ってクール。俺ってモテモテ」。残忍で好色で反省悔悟の情なき殺人マシンがむしろかっこ悪く見える。そういうニューヒーローを造形し得たことが、「ボーン以降」という、時代を画することになった所以なのだと思う。
 仕立てのいい羊毛の服着て銃クルマ酒料理の薀蓄銘柄語る上級公務員を辞めればジェイムズボンドにも勝ちの目はあるかもしれない。しかし彼も知っているはずだ。高給取りをやめた途端女たちは彼に股を開かなくなることを。
 ダニエルクレイグはよく頑張っているが、ボンドが時代のイコンとして蘇生することはたぶんもうないのだろう。

「愛する者を奪われたその痛みがわかるか!」
 その叫びがそのまま彼自身に跳ね返ってくる作品構造は鮮やか。ボーンは己れの過去に復讐されているのだ。

「敵を振り切った。身を隠せた」というボーンの見立ては決して甘い見立てじゃなかった。トレッドストーンが生きていたわけじゃなく、ボーンに罪を被せて甘い汁を吸おうという、予期しようもないちんけな汚職が進行していた。彼とマリーはその犠牲となったのだ。

 掃除人と戦う場面、劇伴がないんだよね。だからほんとに、即物的な殺し合い描写になってる。印象としてたぶんスナッフフィルムに近い。
 それに続く銃の脅迫も俳優(ジュリアスタイルズ)の、そして吹き替え版では声優(沢海陽子)の名演技もあいまって凄い。「お願い殺さないで!」という哀願が真に迫り過ぎて背筋が凍る。殺人も脅迫も映画で昔っから描かれてきたはずなのに、何がどう違うのか。
 酒瓶ガランガラン倒し。からの治療しながら激走チェイス。カーチェイスなんてのも映画の中で歴史長いのに。アクション映画の要求ラインをボーンが一気に引き上げてしまった。
 ぐんぐん加速するアラビックなサウンドトラック。これはもう映像と混淆した交響曲だ。

 前作の偉いひと(男性)と今回の偉いひと(女性)の顔がおんなじなのはなにか意図あるところなんだろうか。なんかおかしい。面白い。

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