以下、全篇ネタバレです。
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今日観に行ってきた。ツイッターのタイムラインでネガティブな評価を散見していたから期待度を低めて行ったらなんだ、大丈夫じゃん。面白かったじゃん。よかったよかった。
時折り胸に兆していた疑問「なぜデススターも帝国もすぐ復活すんの? 同盟は勝利を重ねながらどうしていつまでも貧乏な叛乱軍なの?」に対する回答がおそらくシリーズで初めて開示された。鍵屋さんの言は重要だ。「あんま、見えてるもんそのまんま信じねえほうがええぞ若えの。世の中そんな単純にできちゃあおらんき」。帝国対共和制百年戦争(いや、百年かなんか知らんけれども)には「裏がある」のだ。
それはフォース伝説についても同様で、スターウォーズのパラダイムそのものを転倒させる英断が本作では下された。ナウシカ黄金の七巻にも似た。これには拍手を贈りたい。
SWは拝火教をやめたのだ。
「だ、だってあれ、ジェダイの叡智を収めし大切な経典」「お前あれ全部読んだのか」「えっ! いや、あっ、てっ、ぱ」
経典、教団、権威、伝説。まさにそれこそがジェダイを歪め腐敗させ、いまの没落を招いた元凶であることを、肉体を解脱した先師がルークに告げる。
大事なセリフだし、しかもそれに遊びがあるんだよね。ギャグを入れながら語れる余裕がある。日常会話のリアリティーで。前作同様、今期SW脚本チームのクオリティーは素晴らしい。
これ観たあとではもう、旧三部作のセリフ回しは中学校の英語教材レベルでもう聞いてらんない。
しょっぱなのワープアウト(業界用語でデスアウトとも言う)するスターデストロイヤーのリアリティーも良かったね。バン! バン! って。本物のとか見たことないけど。
んでそれに続くナチ野郎いじりもめちゃくちゃ楽しかった。「だーかーらー、あいつ出せよあいつ。あのちっちゃくて青っちろいの」「だから俺がそうだって! 聞けよ! 聞いてくれよ頼むから!」「あの、司令……司令はいま、からかわれているのでは?」
ひたすら撤退戦、持久戦を続ける宇宙艦隊戦なんて退屈な描写になりそうなもんだけど、全然そんなことなかった。うまいもんだと思った。
「あれが? 普通のおばちゃんじゃん」と見かけでひとをみくびるダメ男。クーデターまで仕出かすクズっぷり。お前には帝国がお似合いだろうと言いたくなる青年決起将校っぷり。
そして、みくびられたおばちゃんの名采配(あとでローラダーンと知った)。ショートデスドライブ(業界用語)の気迫。これ、帝逆の明らかに変な「ひらひら服着たおばちゃん将軍」への揶揄であり、同時にそのおかしさを逆手に取った柔術のようなうまい脚本なんだよね。
そしてルークスカイウォーカー御大(おんたい)、花道を堂々飾る大活躍。白金(はっきん)カイロの指示(「全火器で撃ちまくれ!」)もその描写も厨二イズム全開で大爆笑。微塵も傷つかぬ最後のジェダイ! メイトリクスオマージュまで炸裂! そして納得の種明かし。
落魄のリアリティーもよかったね。なんかわけわからん動物の乳ぐびぐび飲んで(そんときこっち見てるのがまた芸が細かい。「みじめだなあ、落ちぶれたもんだなあっていま思ってます?」って目で言ってる)断崖絶壁で奇妙な漁して。礼文島とかでほんとにあるような感じの人生描写。
「アールツー、それはずるいよ。反則だよ」。うまいよねえ。R2AIの賢さ、人情の深さ。そして、「すべての始まりのそれ」を見せられてなお動ぜぬほどには冷えていないラストジェダイの心。それらを全部一瞬にして物語る一番の名シーンだったんじゃないかな。
前作感動のラストシーンを自ら汚す「なんだいこんなもん」ポイも勿論素晴らしかった。これ、大爆笑ギャグであるにとどまらず今作の流れを示唆する伏線でもあるんだよね。今回こういう話ですよ、と。生涯のすべてを賭けて奉じてきた価値が鉄クズ、ガラクタであると判明する、その悔恨(と、魂の解放)の物語なんだと。
ラストの子供はなんかいらんな軽くウザいなと思わなくもなかった(てらさわホークさんの指摘通り、この子供部分の演出、演技指導はひどい)けど、レイの境遇とも、今回のパラダイムチェンジとも重なる重要な描写でもある。
スターウォーズは貴種流離譚であることもやめたのだ。
賛否あるようであるが、俺は賛成側に回りたい。それは旧SWで、ことにプリクエルで、魚の小骨のように喉に引っかかり続けていた問題であったはずだ。
魔女宅で吐かれたあのセリフのような。「魔女は血で飛ぶ」。
奴隷が支配、抑圧と闘うとき、自由と冒険を求めるとき、彼は貴種という資格など微塵も必要としないのだから。
本邦においても軍の人型兵器を奪取して悪と戦う主人公の要件から「父親は開発者」であることが外される日も近いのではないだろうか。
本作は意外にもエピ5エピ6同時投入のリメイクで、なおかつそれを利用して巧妙に肩透かしを食わせているのがまた楽しい。ガイコツ皇帝、当然次作で倒されるラスボスかと思ってたら意外に小物。人心の機微を解せぬ小人物だったという。パワハラ上司はこんにち悪の組織においてすら部下の離反を招くのだ。スターウォーズアップデイトの面目躍如である。
つうかまあ、本能寺の変、明智光秀だ。
そして当然、あのランドカルリシアンアップデイトさんも次作に出るよね。ペンダント返したことで基本人情家であることは示されているのだから。
百年戦争の時代を、最も覚めた目で見ているニヒリスト。その彼がフィン達善人のために「バカはしょうがねえなあ」と金の亡者のフリをしながらひと肌脱ぐ侠気(おとこぎ)、その本番を今度こそ見たいものである。
でもあの、恋愛描写についてはあんま込み入ったことして欲しくないなあ。フィンとレイの恋物語だけでいいじゃん。他の込み入った要素加えて嫉妬だ憎悪だなってくるとつらいなあ。そんなんのせいで暗黒面にとかなんとかはやめてほしいなあ。
中国市場の意識はしょうがないよね。それはもうしょうがない。映画はもう必ずそうなるんです。そういう商業上の要請がドラマトゥルギーを必ず悪化させるわけもないし。
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今日観に行ってきた。ツイッターのタイムラインでネガティブな評価を散見していたから期待度を低めて行ったらなんだ、大丈夫じゃん。面白かったじゃん。よかったよかった。
時折り胸に兆していた疑問「なぜデススターも帝国もすぐ復活すんの? 同盟は勝利を重ねながらどうしていつまでも貧乏な叛乱軍なの?」に対する回答がおそらくシリーズで初めて開示された。鍵屋さんの言は重要だ。「あんま、見えてるもんそのまんま信じねえほうがええぞ若えの。世の中そんな単純にできちゃあおらんき」。帝国対共和制百年戦争(いや、百年かなんか知らんけれども)には「裏がある」のだ。
それはフォース伝説についても同様で、スターウォーズのパラダイムそのものを転倒させる英断が本作では下された。ナウシカ黄金の七巻にも似た。これには拍手を贈りたい。
SWは拝火教をやめたのだ。
「だ、だってあれ、ジェダイの叡智を収めし大切な経典」「お前あれ全部読んだのか」「えっ! いや、あっ、てっ、ぱ」
経典、教団、権威、伝説。まさにそれこそがジェダイを歪め腐敗させ、いまの没落を招いた元凶であることを、肉体を解脱した先師がルークに告げる。
大事なセリフだし、しかもそれに遊びがあるんだよね。ギャグを入れながら語れる余裕がある。日常会話のリアリティーで。前作同様、今期SW脚本チームのクオリティーは素晴らしい。
これ観たあとではもう、旧三部作のセリフ回しは中学校の英語教材レベルでもう聞いてらんない。
しょっぱなのワープアウト(業界用語でデスアウトとも言う)するスターデストロイヤーのリアリティーも良かったね。バン! バン! って。本物のとか見たことないけど。
んでそれに続くナチ野郎いじりもめちゃくちゃ楽しかった。「だーかーらー、あいつ出せよあいつ。あのちっちゃくて青っちろいの」「だから俺がそうだって! 聞けよ! 聞いてくれよ頼むから!」「あの、司令……司令はいま、からかわれているのでは?」
ひたすら撤退戦、持久戦を続ける宇宙艦隊戦なんて退屈な描写になりそうなもんだけど、全然そんなことなかった。うまいもんだと思った。
「あれが? 普通のおばちゃんじゃん」と見かけでひとをみくびるダメ男。クーデターまで仕出かすクズっぷり。お前には帝国がお似合いだろうと言いたくなる青年決起将校っぷり。
そして、みくびられたおばちゃんの名采配(あとでローラダーンと知った)。ショートデスドライブ(業界用語)の気迫。これ、帝逆の明らかに変な「ひらひら服着たおばちゃん将軍」への揶揄であり、同時にそのおかしさを逆手に取った柔術のようなうまい脚本なんだよね。
そしてルークスカイウォーカー御大(おんたい)、花道を堂々飾る大活躍。白金(はっきん)カイロの指示(「全火器で撃ちまくれ!」)もその描写も厨二イズム全開で大爆笑。微塵も傷つかぬ最後のジェダイ! メイトリクスオマージュまで炸裂! そして納得の種明かし。
落魄のリアリティーもよかったね。なんかわけわからん動物の乳ぐびぐび飲んで(そんときこっち見てるのがまた芸が細かい。「みじめだなあ、落ちぶれたもんだなあっていま思ってます?」って目で言ってる)断崖絶壁で奇妙な漁して。礼文島とかでほんとにあるような感じの人生描写。
「アールツー、それはずるいよ。反則だよ」。うまいよねえ。R2AIの賢さ、人情の深さ。そして、「すべての始まりのそれ」を見せられてなお動ぜぬほどには冷えていないラストジェダイの心。それらを全部一瞬にして物語る一番の名シーンだったんじゃないかな。
前作感動のラストシーンを自ら汚す「なんだいこんなもん」ポイも勿論素晴らしかった。これ、大爆笑ギャグであるにとどまらず今作の流れを示唆する伏線でもあるんだよね。今回こういう話ですよ、と。生涯のすべてを賭けて奉じてきた価値が鉄クズ、ガラクタであると判明する、その悔恨(と、魂の解放)の物語なんだと。
ラストの子供はなんかいらんな軽くウザいなと思わなくもなかった(てらさわホークさんの指摘通り、この子供部分の演出、演技指導はひどい)けど、レイの境遇とも、今回のパラダイムチェンジとも重なる重要な描写でもある。
スターウォーズは貴種流離譚であることもやめたのだ。
賛否あるようであるが、俺は賛成側に回りたい。それは旧SWで、ことにプリクエルで、魚の小骨のように喉に引っかかり続けていた問題であったはずだ。
魔女宅で吐かれたあのセリフのような。「魔女は血で飛ぶ」。
奴隷が支配、抑圧と闘うとき、自由と冒険を求めるとき、彼は貴種という資格など微塵も必要としないのだから。
本邦においても軍の人型兵器を奪取して悪と戦う主人公の要件から「父親は開発者」であることが外される日も近いのではないだろうか。
本作は意外にもエピ5エピ6同時投入のリメイクで、なおかつそれを利用して巧妙に肩透かしを食わせているのがまた楽しい。ガイコツ皇帝、当然次作で倒されるラスボスかと思ってたら意外に小物。人心の機微を解せぬ小人物だったという。パワハラ上司はこんにち悪の組織においてすら部下の離反を招くのだ。スターウォーズアップデイトの面目躍如である。
つうかまあ、本能寺の変、明智光秀だ。
そして当然、あのランドカルリシアンアップデイトさんも次作に出るよね。ペンダント返したことで基本人情家であることは示されているのだから。
百年戦争の時代を、最も覚めた目で見ているニヒリスト。その彼がフィン達善人のために「バカはしょうがねえなあ」と金の亡者のフリをしながらひと肌脱ぐ侠気(おとこぎ)、その本番を今度こそ見たいものである。
でもあの、恋愛描写についてはあんま込み入ったことして欲しくないなあ。フィンとレイの恋物語だけでいいじゃん。他の込み入った要素加えて嫉妬だ憎悪だなってくるとつらいなあ。そんなんのせいで暗黒面にとかなんとかはやめてほしいなあ。
中国市場の意識はしょうがないよね。それはもうしょうがない。映画はもう必ずそうなるんです。そういう商業上の要請がドラマトゥルギーを必ず悪化させるわけもないし。
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