スキップしてメイン コンテンツに移動

進撃の巨人 第26巻



 こんなん絶対倒せないと思った圧倒的強さの「戦鎚の巨人」、その打倒に成功した僥倖の組み立て方が毎度のことながらほんと上手かったね。
 ポッコがイキリ(≒ビビリ)でなおかつ妨害を撥ね退けわざわざ戦線に登場してくれたからこその帰結なんだよね。やる気万歳。それがなかったらエレンは水晶を砕くことができなかった(ただ、あれだとポッコもちょっぴりは飲んだんじゃないか? という疑惑も生じないではない)。
 調子こいたヲタサーの姫が取り巻き共々ズタズタにされんのもなんか気分良かったね。
 独立義勇軍の登場も楽しい。「個人的に興味があった」のはピークにとってイェレナが恋敵であったことを意味するのか。
 サシャはバカなので遠慮も悪気もないあからさまな質問をするのだが、オニャンコポンもといオニャンポコンはそれに最良の回答を寄越す。
「俺達は皆、求められたから存在する」
 これまで寓意、象徴として壁を、差別を、階級を語ってきた諫山が直截にどんと肌の色を作品に持ち込んだその勇気と覚悟を俺は讃えたい。
 そして、彼女の末期のひとことはエレンを、読者を慟哭させる。
 サシャはバカで食いしん坊で、最高に愛すべきメインキャストだった。
 万能感で調子乗りまくってるガビ、これから兵長に思いっきり訓育教導される展開が楽しみである。

 ハンジさんとふたりは情報を交換する際、互いに相手の勘の良さ、頭の良さに驚く。驚きは「この相手に隠し事はできない。滅多なことはしゃべれない」という警戒を生むのだがそれ以上に畏敬、尊敬、「話がめちゃくちゃ通じる相手だ」という喜びが警戒感情を遥かに凌駕する。その機微が見ていて楽しい。

 獣のジーク、その本心はとても額面通りのものとは思えない。部下共々、決定的な瞬間に真の目的を開示する気配濃厚であるが、さて、どうなるか。

 * * *

 NHKで始まった深夜の第3シーズン、これまでとは違うもんのすごい勢いで話はしょってるw まあこんくらいやんないと追っつかないよね、原作とアニメの圧倒的な進行差。
 正直深夜に偶然初めて観たひととかにはもうさっぱりちんぷんかんぷんなことになるはず。漫画と違ってアニメの場合小声、滑舌で何言ってんだかわかんねえよ、って場面も多いし。
 しかし「話よくわかんねえけどなんか面白い」と部分的な何かにでもビビっと反応してそれで原作も購入して読むようになるひと(俺とか)も多いはずなので、そういう導線としてもアニメ化の意味はあるんだろうなと思う。
 主要キャストの声優ずっぱまり度も極めて高い奇跡の作品だし(ユミルだけは、ちょっと。ごめん)。

コメント

このブログの人気の投稿

「星を追う子ども」の感想

 いまから「星を追う子ども」という作品の悪口を言います。星を追う子どもという作品で涙を流した方、新海誠ファンの方は読まないほうがいいと思います。以上、配慮でした。  いやあ、ひどいね。ひどすぎるね。なんだろうこれ。  何を考えているんだろう。  もうね、10分が限界だよ。観るの。通して観るの。だからちびちびちびちび観たよ。何ヶ月もかかって。そんないやなら観なきゃいいじゃんだけど観たよ。  おそろしく長い悪口になると思うので最初にサマリーだけ、見出しだけ列挙しておく。  宮崎駿オマージュ、キャラクターデザイン、頭でっかち、5秒ごとに「はっ!」。マイケルベイ方式。音楽盛り上げ。長い。無駄に長い。新興宗教? 金どっから出てるのよ。新任の先生は特務機関員、と思ったら実はアガルタ研究者で元軍人で奥さんを蘇らせようとしているのだった! 厨二女子の妄想。  オマージュという言葉を最初に知り、かつそういう言葉で修飾することに何の意味があるのか? と初手から疑問を抱くきっかけになったのはデパルマのアンタッチャブルだった。既にポチョムキンを複数回見ていた俺にとって、デパルマが乳母車を階段に転がすことが引用行為であることは理解したが、なぜそれがこの映画のあの場面において引用されなければならないか、また、なぜそれが「オマージュ」と特別に横文字で呼称され、「な、これ、エイゼンシュテインへのオマージュなんだぜ。すごいだろう」と、それこそ敬意を強要されなければならないのかがさっぱりわからなかったのだった。それはいまでもわからない。  その愚行を更に低レベルでこれでもかこれでもかとリプレイしてくれたのが本作「星を追う子ども」である。  しかしどうなんだろう。宮崎駿、試写会招待あったんだろうか。これはさすがに本人も、惣流アスカラングレー同様「ぎぼぢわるい」とうめくしかなかったのではないだろうか。  もう最初から、5分と見続けることが苦痛になってしまったのだが、その原因は複数あって、まずはキャラクター造形、キャラクターデザインにある。  主人公の女の子、全然萌えない。頭でっかち、間抜けの小足で、なんだか体型のバランスが変なのだ。サザエさんみたい。それでいて顔だけはナウシカ、さつき、キキ。  パンチラを期待させるサービスカットが豊富だが、「こいつの見えても別に……」な気...

インテルグラフィックスの設定で動画の白っぽさを解消する(白っぽさシリーズ、その3 たぶん完結篇)

 タイトル通りです。  なにげにね、ほんとなにげに、さしたる予感、確信もないままインテルグラフィックスなにげにいじってみたの。そしたら、この間(かん)の懸案が一瞬で解消してしまった。   HDMIさん 、 サイバーリンクPowerDVDさん 、いわれなき嫌疑をかけていままで悪し様に罵ってすいませんでした。  悪いのはわたしの無知でした。  動画の白っぽさを、なくす。  グラフィックスビデオ設定のコントラスト自動調整を、オフればいい。  後出しジャンケンだけど、答えが出てしまえば「なーんだ」、だよね。  確かにそうだ。明暗の自動調整にノイローゼなってんなら、それ切ればいい。  いやもう、白っぽくて白っぽくて(露出不足でラボから上がってきた昔の印画紙みたい)、また瞬間瞬間に不自然に画面の明るさがディジタリーに、階段状に変わる、明らかにおかしい感じの動画、一瞬で正常化してしまったよ。 「あらこの場面ちょっと暗いわね、こんなんじゃなにがなんだかよくわかんないでしょヨッちゃん。おばちゃんがいまここちょっと明るくしたげるからね」って、パソコンの中のおばちゃんがいままで世話焼いてくれてたんだよね。  僕はおばちゃんに暇を出すことにしました。  俺ヨッちゃんじゃないし。  ノートパソコンの設定としてはデフォルトがそれっての、たぶん正解なのかもしれないね。映像ソースの再現忠実度よりも視認性。  外付けモニターの購入で小さい画面では全然わかんなかった、気にもならなかったことが見えてきた。一挙にアラが見えるようになってしまった。デカい画面という、そういう「量」が「質」のこと炙りだすのってなんかこうあれだよね、示唆するものがある。  この間の死闘、暗闘は消耗したがしかしまたその分得ることも実に多かった。いままでそこらへんの知識まるでなしにパソコンで動画見てたんだよね。実に十年間くらいはおかしな設定の変な色、明るさのままで。「きったねえなあ」ってぶつぶつ文句言いながら。  グラフィックスのビデオ、調整できるパラメーターは他にもあるので、まだまだ勉強すべきこと、更なる発見、正解があるはずである。しかし、懸案の巨大な山はひとまず乗り越えたんだと思う。  しばらくは精神の安定を取り戻せそうで一安心である。 * * * ...

アンディーウィアー「プロジェクト・ヘイル・メアリー」Project Hail Mary by Andy Weir

[プロジェクトヘイルメアリーをこれから読む方へ] 早川書房の訳書上下巻(少なくとも電子版は。紙の方もたぶん)、冒頭に二葉「挿し絵」があります。それ、見ないように、読まないように。ネタバレだから。なるべく見ないようページをめくり、文章から、本文から読み始めることをお勧めします。 さて。以下の感想もヘイルメアリー及び三体三部作のネタバレです。  12月初めにツイッター経由で本書の存在を知り直ちに購入。アンディーウィアーの前作に惚れ込んだ身からすればこれが面白くないはずがない。そしてやっぱり面白かった。期待以上に面白かった。年末年始のお楽しみにしようと思っていたら面白さのあまり今日大晦日に、年内に読了してしまった。 来年、これを超える作品に出会えるのか? はなはだ疑問だ。 もちろん今年度最高傑作。死神永生を超えた。死神永生に圧倒されながらもなにかしら物足りなさを、胸のつかえを感じていたその胸のつかえを一気に洗い流してくれる快作。そう、快作。こころよいのだ。心地よいのだ。爽やかな感動。 終章に至るまでの科学的ギミックをなにひとつ理解できなかった者でも、ただ読み通す膂力さえあればこの感動にたどり着けるはずだ。だってこれは友情の、人情の物語。12光年を股にかけた男の熱い浪花節だから。 黒暗森林で俺達はこの宇宙の現実を叩き込まれた。渡る宇宙は鬼ばかりだと。ともかく誰かが、何かがいたら、考えるな、すぐに引き金を引けと。その殺伐とした宇宙の公理を超克する大団円の展開があるかと期待した我々が死神永生で見たものは……これ以上は語るまい。 そう、プロジェクトヘイルメアリーは「三体」へのアンサーソングなのだ。俺たちには絶望しかないのか? 俺たちはただ生きんがために屠り合うしかないのか? 相手の技術爆発を恐れ猜疑連鎖の地獄を彷徨うしかないのか? アンディーウィアーはひとつの回答を示した。黒暗森林理論を無効にする超理論、新理論。それは友情だと。人の情けだと。 甘ったるい砂糖菓子のような結論か? しかし作者の筆致はそれを十全に説得力ある形で俺たちに叩き込んでくれた。溢れる感動と共に。 この師走に丸々一ヶ月かけて俺は12光年を亜光速で旅し、ウィアーの結論を身を持って体感したのだ。 ウィアーは決して現実から目を逸らして夢ばかり見ているわけではない。ストラット(彼女は面壁者の地位を獲得...