いま頃観た。
途中まではもう最悪。映画が、というよりは主人公がね。常識がなく頭が悪くしかし妙な万能感だけはありたまたま見かけた美人に猛アタックし始め……そりゃ振られるわな、嫌われるわな。そしたら今度は腹いせに武装し始め……最悪。
これから暗殺しようって人間がめっちゃ目立つモヒカン頭で登場。もう頭悪過ぎ。さすが海兵隊上がり(馬鹿だから使い捨て最前線の海兵隊にぶっこまれたっつう円環構造でもある)。見事目ぇつけられて速攻で尻尾巻いて逃げるあのみっともなさ。
で何を思ったか急遽予定変更。この時のトラヴィスに「お前何考えてんの?」って聞いても勿論答えは決まっている。「俺にだってわかんねえよ!」
頭のイカれたヴェトナム帰還兵がヤクザと殺し合って共倒れ……で終わるかと思ったら。ここからなんだか童話を、日本昔ばなしを見ているような妙な展開になっていく。そしてまさに、ここがあるからこそ映画全体が輝いてくる。
トラヴィスを救ったのは「なんで生きてんのかわがんね! おら、おら、なんかええことさしてえんだ!」という一縷の意思。現実のアイリスが単なるクルクルパーの家出娘であることなど関係ない。トラヴィスにとってアイリスは触媒のような存在だったのだろう。
とはいえやっぱ死んだんだろうなと思わせてからの職場復帰。目から隈は取れ憑き物の落ちたようなトラヴィス。
「新聞は大袈裟なんだよ」。武勇伝を誇るでもなく、格別面白くもない業務を淡々とこなす。彼は男に、職業人になったのだ。
有名になった途端股を開く気満々の彼女も大爆笑だが、もはやトラヴィスに「お、これはワンチャン狙えるかも!」と餌にがっつく意地汚さはない。
カッコいいとはこういうことだ。
男は不器用ながらも何事かに賭け、燃え尽き、そして自信を取り戻した。だからもう虚勢を張る必要がないのだ。
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