個人的に困難を抱えてるひと、精神的に不安定なひと。「SFでも読んで気を紛らわせるか」なんつてこれに手を出したら大変なことになる。絶対やめた方がいい。
「やめてよー。もうやめてよー」。繰るページに懇願してるのに一向にやめてくれない酸鼻を極める大虐殺。いや、博士一行が目標に近づいてる場面から「志村、うしろうしろ!」て読者みんな言ってんだけど、まさかこんなことになるとは。
んでまさかの、更なる地獄。嘘でしょっつー。
はい、ほんとの絶望はここからですよ、っつー。
「宇宙が暗黒の森だとあなたたちは知っていたのか?」
そうなんだよね。黒暗森林、暗黒とひっくり返すとようやく意味が取りやすくなる。これは絶望の書だ。渡る宇宙は鬼ばかりなのだ。
そしてもう終わったよね、最後くらいは次巻に希望つないでくれるよねと思ったら、残り少なになる頁数で俺たちが目にするのは華北平原でずぶ濡れになってひとり歩く落魄した面壁者の姿だ。おっともうこれ以上は言えねえ!
「大丈夫? 顔色相当悪いよ。救急車呼ぼうか?
いやー、俺まじ心配だわ」
大爆笑。爆笑して感動。感動して爆笑。小説でも映画でも、こんなイカレたお話いまのいままで見たことない! 笑った笑った。泣いた。
第一部もそうだったけど、第二部も「ここで終了でも全然いい」とこに話を落着させる手腕に舌を巻く。続きはまたね、でごまかさない。終わりまでページあと何枚かでこんな芸当ができるものなのか。
んでこれ、破壁人2号のまんまリフレイン。さすが。物語冒頭で平然と結末のネタばらしするのはもう劉慈欣のお家芸だ。どうせ誰も気づかないしねー、という絶対の自信。
ハードSFにしてかつまったきエンタテイメント。あらためて思う。リウツーシンは天才だ。
第二部下巻の「三体問題」がこれだ。人類と彼らの二項だけで考えていたらもはや絶対に勝ち目はない。智子。水滴。勝てっこない。しかしここに第三項を導入した途端?
宇宙社会学の帰結を俺たちはいま目にしたばかりだ。猜疑連鎖。やっぱ駄目じゃん。死ぬじゃん。
しかしここで羅輯は気づく。面壁二百年は伊達じゃない。俺たちの絶望は等しく三体世界にとってのそれでもあるということに。
黒暗森林の闇の中で、俺たちは強制的に家族となる。
互いにいたわりあう関係を強要される。
だからああいうことになる。もう、実家からかかってきたオカンの電話そのものやないか。「ああ、大丈夫、野菜ジュースも飲んでるって。もう切るよ!」
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