「若者」について(そんなものが実体として存在するのかどうかも含めて)の考察を進めていった結果、古市憲寿氏は大変な結論にたどり着く。
ここだけ取り出してしまえば「なんという前近代的な考え方だ」と反発を受けかねないが、冒頭から読み進んだ者にとってそれはけっして奇矯な結論ではなかった。
もちろん古市氏はこれを「はいこれが正解」と提示して考察終わり、にしているわけではない。いろいろと余白がある。こういうのも正解、とあえて提示することで常同的な弛緩した思考に冷水を浴びせる悪意もそこにはあるだろう。
「奴隷の生、家畜の安寧よりも狼の自由を!」とかいうあらゆるイデオロジスト(中学二年生、と言っても可)の勇ましさに辟易するのはきっと自分だけではないだろう。この若き研究者が多く注目と支持を集める所以だと思う。
古市憲寿さんについて「なんか朝ナマとかに最近出てる気鋭の論客」くらいの知識しか持たないまま初めてその著作に触れたが、無類に面白かった。このひとの魅力は語り口。あの「ツッコミ」だよね。定説、世間的常識(特にオッサンのそれ)に対する絶妙なツッコミ。悪意。軽蔑。それがいちいち的を得ているカタルシス。
本文のみならずあの膨大な脚注がいちいち面白い。そうなんだ。面白いんだよ。社会科学のテキストで頁をめくるのが楽しく、時に大爆笑してしまうなんて、そんなこといままで一度もなかった。
新刊も出たようだからそのうちまた購入したい。
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