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ヱヴァンゲリヲン新劇場版Q EVANGELION 3.33 ブルーレイ

ヤマハのコマーシャルに使われてもおかしくない、そんなスタイリッシュな映像・音響結合。岩井俊二の映画って観たことないけど、こういう感じなんでしょうたぶん。少女漫画の文法。庵野秀明は今回その美学を自覚的に導入した。
ツイッターで誰か指摘してたけど、性役割ほんと逆転してんだよね。少年二人が頬赤らめながらピアノ弾いて、少女二人が人型決戦兵器でその少女のような二人に獰猛に襲いかかる。ほんとイマっぽい。

「どうしたらもっと上手く弾けるのかなあ」
「上手く弾く必要はないよ。ただ気持ちのいい音を出せばいい」
「じゃあ、もっといい音を出したいんだけど、どうすればいい?」
「反復練習さ。同じ事を何度も繰り返す。自分がいいなって感じられるまでね。それしかない」

レザボアドッグズで先輩デカの語る潜入捜査の心得がそのままタランティーノの映画哲学であるように、この会話も庵野秀明が自らの映像哲学を語っているように見える。
と同時に、これ、作品自体の構造、作品が描く人類、世界、宇宙そのものの構造の謂いにもなっている。ゼーレの老人もゼーレの少年もゲンドウも、それぞれが「かくあるべし」と思う本当の世界を求めている。

しかしまあ、やっぱり根本的におかしいと思うんだよね。少なくともゼーレの老人たちは。「予言の成就を願う」って、どう考えても背理、転倒した思考でしょ。「死海文書に書いてあったんでその通りにする」って、それ予言じゃなくて計画書じゃん。「予言の実行が遅れているぞ」って、それ、予言じゃねえじゃん。んで予言通りになった、バンザイ、これで安心して死ねるって、もうなんだか思考としてよくわからない。
よくわからないんだけど、世の中にはそういう類の転倒した、奇妙な思考に取り憑かれてわけわかんない奇行を始めるひとたちがほんとにいるから恐ろしい。


「ネルフでは『人類補完計画』と呼んでいたよ」
「ネルフが、これを。
 ……父さんは、何をやってるんだ」
「……碇シンジ君。一度覚醒し、ガフの扉を開いたエヴァ初號機は、サードインパクトのトリガーとなってしまった。リリンの言うニアサードインパクト。すべてのきっかけは、君なんだよ」

このセリフ結構重要だと思うんですよ。カオル君はここで「サードインパクト」と言い切っている。リリン(=人類、つうことでOK?)たちが勝手に「ニア」をつけてる、というふうにも聞こえる。ニアがつくかつかないかでシンジ君の戦争責任、もとい「サードインパクト責任」のあるなしがガラリと変わる。
歴史認識が180度転換する。
俺は「あれが完全なるサードインパクトだったんですよ」説側に与する。ゼーレはカオルに槍を使わせ「サードインパクトを中途で止めた」の体をとることですべての責任がシンジに、その上司葛城ミサト、統括組織ネルフジャパンに被さるようにしたと。ネルフは責任を問われ武装解除、関係者の拘引、組織解体に。当然ゲンドウ、冬月も逐われる立場だがそこは策士、なんだかんだ理由を作るなりチベットまで一時逃れたりしながら結局ゼーレへの恭順を装い復権したと。そんな感じなんじゃないでしょうか。
シンジ君が綾波救出をはかろうがはかるまいがあのときサードインパクトが起こるのは既定路線だった。なんとかいう使徒の力で。シンジ君に責められるべき点があるとすればそれはただゼーレなりゲンドウなりに口実を与えてしまった、それだけの責任しか彼にはないのではないかと思うわけです。
いや、つーか、ねえよやっぱ、責任。戦争責任はおろか、中学生 humanshaped decisive weapon に載せてる段階でもうおかしいんだよ。負けてんだよ。
「無理はやめよう。もう負けだよ。白旗。降参」ってのもありだと思うよ。学徒兵動員、ってとこまで行ったら。諦める人類史、ってのを持てたら、それこそ人類、よおやっとおとなに進化した、って言えるんじゃないかなあ。
補完ここに成れり、だよ。

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