主 ジャケ、ヤバイね。
客 いくら怪人とはいえ、これはもう人間じゃないよw
その洋館なら、少年たちはよく知っていました。赤レンガの古い建物で、スレートぶきの急な屋根から、やはりレンガでできた四角な暖炉の煙突がそびえている。いまどき、どこにも見られないような、うすきみの悪い、へんなうちなのです。
主 いいよねえ。少年探偵団定番の導入部。
客 洋館は紙とふすまでできた貧しい日本の現実から離脱する異界への入り口なんですよね。
「ねえ、おかあさん、これは、きちがいが、塀をのりこえて、はいって来たのかもしれませんよ。きちがいは、ばか力がありますからね。」
「まあ、きみのわるい。でも、そんなきちがいが、このへんにいるという、うわさも聞かないけれど……。」
主 お母さん、しれっとひどい言い方しよるw
客 作品の歴史的価値に鑑み当時の表現のままお送りしておりますw
「だいいち、諸君をだまってわしのうちにつれこんだりしては、きみたちのおとうさんやおかあさんに、しかられるからね。」
主 おい。
客 さすが怪人。自分の社会的立ち位置にものすごく自覚的ですね。
主 黙って連れ込んで失敗したり怒られたり大騒ぎになったりしたいくつもの苦い過去が言わせる重いセリフだね。
明智探偵はニッコリ笑って「もっとこちらへ。」というあいずをしました。小林君が、その意味をさっして、リンゴのような頬(ほお)を、ベッドの上の先生の顔のそばへもって行きますと、明智は、その耳たぶに口をよせて、何かささやきました。
主 「察して」じゃねえよ!
客 僕らはもう乱歩先生がそういうひとだと知ってるからあれだけど、こどもん時は不思議と全然気づかなかったんですよねえ。
主 発表当時にあってもガツンと衝撃を受けながら読んだひともいるんだろうね。
客 おとなにも、こどもにも。ここに自分と等質者がいる、これは俺だ、と。
もうどうすることもできません。小林君はふたりの男に、右左から手をとられて、うむを言わせず、自動車の中に、おしこめられてしまいました。そして、手足をしばられ、さるぐつわをはめられ、手ぬぐいのようなもので、目かくしまでされてしまったのです。
小林君は、されるがままになって、ジッと自動車のクッションにもたれていました。こわいと言うよりも、なんだかうれしいような気持ちです。
主 小林君もよお、大概だよな。大概なもんだよな。
客 完全に上級者ですね。シロウトじゃないw
「そうです。そのほかに、逃げ道はありません。ぼくたち三人は、あいつの五十メートルほどあとから、電信柱や、ごみ箱や、いろんなもののかげに、かくれながら、尾行しました。」
「あいつは、すこしも気づかなかったかね。」
「ええ、ちっとも。ぼくたち、小林団長におそわって、いつも練習していますから。」
「ウン、感心、感心」
主 ユーゲントだねえw
客 どう見ても青少年のまともな課外活動じゃないw
主 任務を与えられ完遂し褒めてもらう、組織内で階級、役職を駆け昇る、っていうのがこれもう少年の渇望、終生続く本能であることを少年を知悉する乱歩は見抜いていたしまた実際統治にこの性向を利用したのが独逸第三帝国なんだよね。
青空文庫リンク https://www.aozora.gr.jp/cards/001779/files/56672_61232.html
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