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「ダンケルク」Dunkirk, 2017.

 今日時点のブルーレイ価格、973円。

アマプラで観た。

大向うを狙ってないのが良かった。ノーランはこういう、史実ベースの話を淡々と撮る方が向いてるんじゃないか。ブラックホールとか時間旅行とかたいして知りもしない分野(関心が本当にあるのかも俺は疑っている)を一夜漬けの即席勉強で撮るのよかずっと良い。

ただいつものノーラン節はあって、時系列の混交。トロッコ問題。

叙述の意図的な前後はパルプフィクションの影響なのか? まあ不思議な効果はあって、「ああ、さっき空から眺め下ろした海上の光景はこういうことだったのか」という答え合わせ的な面白さはあった。

ただトロッコ問題への拘泥はどうなのか。それ必要? と思う。後味が悪くなるだけだ、と思う。偶然出会ったあの三人が生き延びる努力を協力しながら地味にやっていく、それだけでも十分にドラマであるのだからわざわざ何か(それも「これは哲学的な命題なのだよ」とノーランがドヤってる気味合いの)を足さなくてもいいのでは? と思った。

船内の温かい毛布、食事に背を向けて極力誰とも口をきかないようにしていた彼(を含む三人)と、海上で漁船に拾われ色々みっともない振る舞いに終始した彼とは「ダンケルクから逃げたい」という方向性においてまったく相同であるのに後者だけことさら卑怯で臆病で悪者に描いた(というかそういう人物を作った)のもなんだかなあと。嫌な後味が残る。必要なエピソードだったのかな? と思う。そういう史実がもしあったのだとしても。

なにかノーランの中にそういうもの、トロッコ状況への偏執、こだわり、こだわらざるを得ない個人的な情念、事情、理由、があるのだろうなあと思う。まあ彼が監督なんだから、そういうものを盛り込みたいのならそれはそれで仕方がない。

勿論あの燃料を失った戦闘機が独軍機を屠(ほふ)ってみんなを絶望から救い、諦めることなく着陸するエンディングは文句なくよかった。

頭を打って死んだ少年、彼の顔がとてもよかった。ああいう「普通の顔」をした役者さんがもっと増えるといいなと思った。

好きな監督ではない。しかし「絵」力、引き込まれる画面の迫力、その魅力は正直に認めざるを得ない。

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