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貧困女子

この夏一番の暑さになる模様。

香港政府の職員が成田空港に到着
午前中から猛暑日 熱中症に注意を
イスラム協力機構 シリアの資格停止
O157 死亡女児も浅漬けから感染

もうふたつきくらいになるだろうか。
その日、俺はスタバでボーっとアイスコーヒーを飲んでいたのだった。スタバのコーヒーは濃すぎるのでアイスもホットも嫌いなのだが、禁煙で静かでキレイで落ち着ける場所として仕方なくそこに落ち着いてしまうことが多いのだ。
その、外を眺めるカウンター席の俺の隣に、若い女の子が座った。そして手にした、たぶんヤマザキとかの、工場で作って袋詰めした菓子パンを、やはり持参したペットボトルの何かを飲みながらむしゃむしゃ食べて、そのまま出ていってしまったのだ。
スタバのコーヒーとか、店の商品はなにもなかった。座って、持参の食物をむしゃむしゃ食べて、飲んで、そんで出てってしまったのだ。その間たぶん数十秒。
俺は目を見張ったし、彼女も俺を見返した。外見は若い娘さんだが、目に異常な光を宿しているのを俺は見た。
彼女は歩いてどこかに去ってしまった。
サンプル数1で、そしてたった数十秒の観察を元にして想像を繰り広げるのは実証的ではないのだけれど、俺は瞬時に思った。
ああ、心を病んだ貧乏女子だ、と。
いや、逆かもしれない。貧乏女子が長びいて心も病むに至った。
いま、日本がたいへんなことになっている。不況の現実が恐ろしい段階に突入しつつある。こういう女子が急速に増えている。俺はその巨大な氷山の、僅かな露頭を目撃してしまっただけなのではないか。
加藤智大は派遣切りに遭って秋葉原で自暴自棄の凶行に及んだが、貧困女子たちによる何かそれ以上の大変なことがいま準備されつつあるのではないか。
加藤智大の追い詰められた気持ちに極めて近似した状態の、暴発寸前の女性たちがいるのではないか。
彼女らを犯罪予備軍として白眼視しているのではない。経済状況(と生産の偏った分配構造)がそういう行動を一部の犠牲者に強いつつあるのではないか、と恐れているのだ。
80年代末、円高を利用して訪ねたアイルランドで俺は放置したゴミだらけの街区とそこにベタ座りし物乞いする若い女性を見た。日本もいま、あの段階に突入する寸前なのではないか。いや、もう突入しているひとも、ところも、あるのではないか。

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