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ハシシタ

週刊朝日「ハシシタ」第1回を読んだ。橋下徹への嫌悪をのっけから隠さない叙述に「さすが佐野さん」と脱帽した。いつも人の予測の上を行くひとだ。
大変な人気者らしいが、恐ろしく暗い目をした男だな。それが第一印象だった。
 橋下はテレビカメラが回るとわざとらしい作り笑いを浮かべる。だがテレビカメラが回っていないとわかると、たちまち素に戻って暗い顔になる。この男は裏に回るとどんな陰惨なことでもやるに違いない。
こう書かれた本人がいい気分になるはずもないが、このレポートが暗い目、暗い顔の理由を剔抉して彼をその牢獄から解放する魂鎮めの書とならぬ確証がどこにあろう。連載は長い目で見らるべきだ。

ツイッタータイムラインを見る分に昨晩既に週刊朝日は膝を屈してしまったようだが、同業他社がこんなおいしい企画が流れていくのを指をくわえて黙って見ているはずがない。部数倍増、ベストセラー間違いなしの鉱脈である。連載獲得に向けた水面下の暗闘はとうに始まっているだろう。
新潮社から出るか文春から出るか。単行本が楽しみである。
佐野眞一の連載ひとつ守れなかった朝日がファシズムを食い止められるはずがない、なんてこともないだろう。戦争の勃発や原爆、原発の爆発など、朝日はこれまで危うく大惨事となりかねない悲劇を修羅場からけっして逃げない現場記者の超人的活躍で未然に防いできた。これまでそうであったようにこれからも光輝ある歴史を紡いでいくに違いない。
新刊で佐野氏もそうした朝日の実績・実力を褒め称えこそすれ、「日頃偉そうなことばっか言ってやがるが肝心なときには糞の役にも立たねえ優等生の腰抜け集団」呼ばわりすることなどけっしてないだろうことは春秋の筆法をもってしても火を見るより明らかであると言わざるをえない。
 オレの身元調査までするのか。橋下はそう言って、自分に刃向かう者と見るや生来の攻撃的な本性をむき出しにするかもしれない。そして、いつもの通りツイッターで口汚い言葉を連発しながら、聞き分けのない幼児のようにわめき散らすかもしれない。
いまのところ橋下氏の行動は佐野さんの予想を忠実になぞっているように見える。
本人にはどうしようもない出自で人を差別して喜ぶ下卑た快楽に狂奔してきた残忍なサディストどもが佐野眞一という怪物を前に「そ、そんな、父親の職業とか暴いていいと思ってるのか。お、思いやりとかじ、人権感覚ってもんがないのか。人間はみんなびょ、平等なんだぞ」と慌てふためいている光景はまったく出来の悪い漫画としかいいようがない。
「隠れていないで出てこい貴様らーっ!!」と悪魔人間不動明に一喝されたあの連中、牧村夫妻を惨殺したあいつらを彷彿とさせるものがある。
ハシシタ資金集めパーティーの様子がまったくあの通りであったろうことは、維新国会議員団の定見のなさを知っている我々からすれば容易に首肯できるところである。

「血脈主義、身分制に通じる極めて恐ろしい考え方だ」
橋下氏がほんとにこう発言したのだとすると、さて、どうするのだろうか。彼の目指す維新とはけっして王政復古ではなく、血脈主義と身分制を根絶した万民平等の無階級社会創建、というふうに了解してよいのだろうか。
彼の朝日新聞に対する要求はつまり、もっと人権を尊重しろ! ということでよいのだろうか。もっともっと、いままで以上に人権派たれ、左傾化せよ、と。
今後朝日新聞がその人権左翼っぷりを非難されることがあれば、橋下氏及び維新の会は率先して朝日新聞社擁護にまわることが期待できよう。

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