…あなた方はネパールにいるのだから、地の利を生かして彼らから供述をとり、それを現在、公判が開かれている日本の裁判所に送る考えはないのか、とたずねた。そんな質問にも、
「それはアムネスティの仕事の範囲ではありません」
という、木で鼻をくくったような答しか返ってこなかった。
私は心のなかで、やれやれとつぶやいた。…
私は善意がもたらす罪というものを感じないわけにはいかなかった。
同様のことは、人権、人権といいたてるだけで、人権回復の具体的なアクションを何ひとつ起こそうとしない人権派といわれるわが国の困った人びとのグループにもあてはまる。人権と一言叫ぶだけで、本当に人権が回復し、死刑になるかもしれない恐怖からたちまち解放されるなら、何も私も好き好んでネパールくんだりまで出かけてくることもなかっただろう。
「東電の面接試験を受けたとき、うちは四大卒であっても女性は短大卒と同じに扱いますと、はっきりいわれました。うちは総合職としての採用はない、目的別採用だという説明にも、ガックリ来ました。…私が目指したのはスペシャリストでなくゼネラリストだったので、東電の採用方針はタテマエとホンネが違う、と随分迷いました。 …」
『東電OL殺人事件』 佐野眞一、2000年。
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