この文面にもまた冤罪「運動」独特の匂いが付着していると思った。私はゴビンダの無実を疑う者ではない。しかし、だからといってゴビンダがこの手紙にあるような家族思いなだけの人間だとも、清廉潔白な人間だとも思わない。ゴビンダが泰子以外の売春婦を殺害現場となった喜寿荘一〇一号室に連れ込んだことも、埼玉県西川口のストリップ劇場の舞台にあがりこみ、ストリッパーとセックスに及んだ人間だということも、私は知っている。そんな人間なのだから、泰子を殺したのはゴビンダに違いない、という短絡的な発想をとる人もなかにはいるだろう。しかし、私はそうは考えない。彼が自分の破廉恥な行為を法廷で自ら告白したことに、むしろ私はゴビンダの「真実」を感じる。
『東電OL症候群』 佐野眞一、二〇〇一年。
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