とても良かった。「悦楽交差点」と併せてもう完全に城定監督のファンになってしまった。ファンというか、「このひとは絶対ハズレがない」という信頼感。
たぶん全力では作っていない。でもその余裕が逆に頼もしい。無理をしない、出力70パーだからこそできる境地がある。
内容的に自叙伝風味が強い。そして映画愛。庵野劇場に飽いた君(俺)、これだよ。これこそが監督の私小説だよ。私小説作家だよ。
望月美寿々演ずる映研女子若松美咲が素晴らしくかわいいのもヨシ。ほんとに見惚れてしまった。ほのかな恋の描写もよい。この設定だと終盤まで陰惨ないじめが続くのかな、観るのがつらいなと予期したらそこらへんは序盤でさらっと済ましてしまう。気持ちいいしうまい。須崎くん、あっという間に馴染んでクラスの人気者(どころかモテモテ)。予定調和的展開は脚本段階でカット。わかってるひとだ。
ドキュメンタリー、ことに浮浪者を素材にしたそれ、が持ちかねない欺瞞に翔太が気づく展開もよい。なんと彼はそれを「俺もなる」という投機によってアウフヘーベンするのだ。このタイトルからしてふざけたような作品が実は秘めている真面目な先進性、卓越を示すものだ。
2008年にして2021年の事件を予見している。思想的に遥かに凌駕している。河瀬直美は城定監督の前に跪拝せよ。お前には百年経っても撮れない作品だ。
「ホームレスって。家あんじゃん」。セリフのひとつひとつが面白いのも城定作品の魅力。いちいち吹き出して笑ってしまう。
完成映画の締めで美咲が結構ひどいことを依然明るく言ってるのがまたよかった。「少しわかりました!」少しかよ!
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